19.3 女院の死
✈✈✈Let' go to SenmojiGenji
葵の上と権中納言(頭の中将)のお父さんの
「なんだか今年は死ぬ年のような気がしていたのよ。あなたとお父様(桐壺院)のお話をしようと思っていたんだけど、なかなか会いに行けなかったわね」
女院がそう帝に話しかけるの。
「厄年なんだから普段以上に祈祷をさせなきゃいけないのに……」
冷泉帝はそう言って悔やむの。ずっとお母さんのそばについてあげていたいんだけれど、帝の立場上長くは外出できなくてしぶしぶ女院の元を離れたの。
女院は高貴な身分に生まれて、桐壺帝に嫁ぎ、中宮になったので、表向きは女性として最高に幸せな人生だったと思われているのね。けれども源氏との禁じられた恋のことが気がかりで心の晴れないことだと女院は思っていたの。
源氏も女院が重病だって聞いて会いに行くの。すっかり弱ってしまった女院の姿とやるせない想いに悲しむ源氏。几帳の向こうに女院がいらっしゃるけれど、もちろん源氏も女院も顔をあわすことも本心を口にすることもできないのよ。
「院(桐壺院)のご遺言をお守りくださり、陛下(冷泉帝)のご後見もよくしてくださいました」
女院はそう言って源氏をねぎらうのね。
「私など無力ですができるだけの努力はいたしております。太政大臣がお亡くなりになり、あなたさままでご病気になられ、私も生きていられません」
源氏も泣きながらそう言うのですって。女院への恋しい気持ちを抜きにしても、幼い頃から長い間関わってきた人の命が消えていこうとしているのに自分にはどうしてあげることもできないと嘆くのね。
そしてお見舞いの言葉を交わすなかで女院は息を引き取られたの。
折しも桜の季節。あの桐壺院の桜の宴会のこと(episode8 8.1朧月夜の出会い)を思い出して藤壺の宮のことを想うの。
~ 深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染に咲け ~ (古今集)
(もし桜に心があるのなら、今年だけは墨染(喪服の色)に咲いてくれ)
源氏はこんな歌を口ずさんで涙にくれるの。春の夕暮れ、夕日が山を照らしてその下を薄く流れていく雲が
~ 入日さす 峰にたなびく 薄雲は もの思ふ袖に 色やまがへる ~
(夕陽がさす山にたなびいている薄雲が俺の喪服の色に似せたんだろうか)
誰に聞かせるでもなくひとりでそんな歌を詠んだの。源氏の哀しみようが伺えるわね。
To be continued ✈✈✈
🖌Genji Waka Collection
~ 入日さす 峰にたなびく 薄雲は もの思ふ袖に 色やまがへる ~
源氏大臣が藤壺の宮を送った際に詠んだ歌
◇永遠の憧れの
「源氏の悲しみもわかるけれど、藤壺の宮さまはどんな気持ちだったのかな……」
難しいですね。
「最後の最後まで自分の気持ちを伝えられなかったんだね」
息子の冷泉帝を護りきることが源氏と宮さまの愛情表現でした。
「幸せだった」「幸せでなかった」
簡単な二者択一ではないですね。
「愛って難しいね」
本当ですね。
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19.4 衝撃の真実
☆☆☆
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