東京転生・2020

江野ふう

第1話 ブラッドムーン・シューティングスター

 目前に立ち並ぶ黒い高層ビル群の向こうには、赤黒い月が夜闇に滲むようにぼんやりと浮かんでいる。その異様な存在感を放つ巨大な月の明かりに負け、なりを潜める星のひとつがきらりと白く、不釣り合いに輝いた。


 星が、落ちた。

 

 渋谷道玄坂の黒ずんだ雑居ビル四階の一室。

 天井には裸の白熱灯がぶら下がっているが、厚く埃がかぶっていて長年使われた形跡はない。電灯のスイッチを入れたとしてもパチンとヒューズがとんでしまうのではないかと思われるほど古い。

 カーテンのない窓は開け放たれており、背の高いO脚の男がひとり、ベランダの黒い鉄柵にもたれ掛かりながら、電子煙草の黒いケースを右手に握りしめて呟いた。


「……また、転生か」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る