カムチャッカ租借条約


 シベリアからの避難民はほとんど全員、ロシアに戻ることを希望、この方々は財産など有りませんので、話は早いです。


 次に本来のカムチャッカの住人約三十万人、そのうちの二十万人は、ヨーロッパ・ロシアに行きたいと希望しました。

 財産の査定には、多少の上乗せをしましたので、あまり文句はありませんでした。


 コリャーク人など、カムチャッカに住んでいた先住民族の方々は、当然残ることを希望されましたが、かなりペトロパブロフスク・カムチャツキーに住まう事に抵抗を示されました。


 この点については、ナーキッドは一切の公共サービスが出来ない事、後々、いくつかの拠点都市を作るのでそれまでは待つように。


 その時が来れば、要望があれば優先してそこへ移住さす、ただし確約はできない。

 まずはないと考えておいて欲しい、努力目標を強調しました。


 しかしこれでは納得をされませんでしたが、忍の提案で、ペトロパブロフスク・カムチャツキーに住居の拠点を置き、半年の僻地テント生活をする。

 この僻地テント生活では、すべては自己責任という案で話がまとまりました。


 こうしてナーキッドとロシア帝国は、カムチャッカ租借条約を締結、後日、割譲か租借延長かを再協議することになりました。


 カムチャッカに残った住民は十万名程度、北東軍集団は解散、ロシア軍も大部分は撤退していきます……

 ただパラナで戦った極東ロシア軍の兵士、三千五百名の内、生き残っていた二千名は残ってくれました。


 この二千名で防衛治安部隊を設立、パラポリスキー地峡防衛ラインの海部分は、海岸線にかなり長い地雷原を構築することで解決、こうしてカムチャッカはナーキッドの直轄一級市民地区として成立したのです。


 上杉忍は今回のカムチャッカ防衛戦、及び戦後処理での貢献を評価されました。

 帝都に帰還すると、美子から直接に感謝の意を伝えられたのです。

 そして休暇がもらえたのです。


「ねえ、紅葉さん、京都伏見の吟醸粕の焼酎が手に入ったの……シベリアもあるわ……」

「ますます変な取り合わせですね……お饅頭で日本酒を呑むようなものですね……でも、いいですよ……」


 二人は変な取り合わせで酒盛りを始めました。

 場所は東京ハウス……そこへサクラ・ハウスの面々が乱入します。


 高倉隊長がなんとペルツォフカ――唐辛子をウォッカに漬けたお酒、からい――を持ち出しますが、

「隊長、これはシベリアには会いませんよ」


「なんでペルツォフカのお友達に、シベリアなのよ!ピロシキに決まっているでしょう!」

「私も混ぜてよ」


 誰かと思えば、美子さまがロシアのピュア・ウォッカを手に持ってやって来ました。

 しかも度数五十のプレミアムウォッカです。

 もう一本、シトラスフレーバーウォッカも持っています。


 その後はドンチャン騒ぎになり……翌日、東京ハウスのもっとも怖い方、鈴木聡子さんに、美子様を筆頭に長々とお説教をいただくことになりました。


 この後、美子は忍を何かとこき使います。

 そして忍はついにはテラ・メイド・ハウスを預かり、事実上、故郷でもあるこの惑星テラの主権者たる、ウェイティングメイドに就任することになったのです。


    FIN

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る