カムチャッカ戦後処理交渉


「終わりましたね……」と、忍が高倉に声をかけました。

 高倉が、

「悪かったわね……貴女は民生部門の連絡要員だったのに……なし崩しで戦いに巻き込んで……」

「でも貴女がいなかったら……犠牲は膨大でしたね……よくあそこで、装備を廃棄できましたね……軍人には無理な発想です」


「……そんな……私は必死だったものですから……」

「その必死さが良かったのでしょう……とにかくここは早く去りましょう」

「いつまでも軍機の陸戦ロボットを、衆目にさらすわけにはいかないでしょう」


 その頃には、ロシア北東軍集団と、ナーキッドの傭兵部隊の戦いも終わっていました。

 後は戦場掃除だけですね……


 なんとかカムチャッカの戦いも終了し、サクラ・ハウスが作った、パラポリスキー地峡防衛ラインの地雷原も、機能しています。

 後はこのラインの、海側の防衛を考えるだけです……


 ペトロパブロフスク・カムチャツキーは、戦勝で湧き上がっています。

 この後、ロシア帝国と、ナーキッドの戦後処理の話になりました。


 ナーキッドからは、シャルル枢機卿が全権代表としてやって来ました。


 その結果、ロシア帝国は、この飛び地になったカムチャッカを、ナーキッドに貸与するとの話になりました。

 意外にもシャルル枢機卿は、難色を示しました。


 ナーキッドとしては、アイスランド以外に、このような隠れた領土は、持ちたくないのです。

 小さな島なら別なのですが、カムチャッカ半島は広大です。

 しかも世界有数の火山地帯、地震も巨大な物がありますし、津波も半端ではない……


「ナーキッドとしては、不安材料が多すぎる……」

「この地はロシア帝国の領土、租借など経費が掛かるばかりか、住民の反発も買う恐れがある、リスクが多すぎる」


「ロシア帝国としては、この地は飛び地の維持が難しい……それに……将来の計画からは……」

「それは口外無用の話、確かにこの地は、ナーキッドとしては、ヨーロッパ・ロシアに準ずる扱いは確約する」

「しかし……借りるとして、住民はどうするのか?」


「この地をナーキッドに貸与することを公表し、希望者はヨーロッパ・ロシアにて受け入れる」

「財産などは、現時点の時価で清算する、これはロシア帝国が行うが、経費はバーターでお願いしたい……虫がいいとは思うが……」


「バーター?」

「この地に有る、すべての軍事装備ではどうか」

「……」

「さらには地下資源も豊富にある、その採掘権も譲渡する、将来的には割譲しても良い」

「……私の判断では決めかねる……返事は二日待ってほしい……」


 で、美子さままで、話が上がったようです……

 住民の出来るだけの退去、残った住民はペトロパブロフスク・カムチャツキーに集結する事を前提に、受諾となりました。


「条件付きで受諾する、条件は住民の出来るだけの退去、残った住民は、ペトロパブロフスク・カムチャツキーに住まう事」

「……分かりました、住民に勧告いたします」


 と、いうわけで本来の忍の仕事ができました。


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