大陸対策の責任者


 月見の宴から二日後、三ツ瀬賓館で会議が開かれました。

 端島中華特別行政区、これが『端島中華地区』の正式名称ですが、その行政府の幹部が集められたのです。


 一応、端島中華特別行政区総統の劉老人が、集まった面々に二日前のミコとのお月見会談の内容を、洗いざらい報告しています。


 色々と劉総統の提案は了承されます。

 そして東アジア対策について議論が始まります。


「しかし劉総統、ミコ様への忠誠は必要ですし、ここにいる誰もが、そのことは実感しています」


「東アジア対策は総統のおっしゃる通り、この端島中華特別行政区が、一級市民地域となるための試金石」

「もともと麻薬組織構成員だった我ら、ここで誰もが納得する成果を出せば、一級市民になれる、それも理解できます」


「列島対策に芙蓉様、この人選はベスト、私たちは芙蓉様なら結果を出し、将来はテラ・メイド・ハウスのウェイティングメイドになれると思っています」


「しかしです、なぜ大陸対策が志玲様なのか?理解できないのです、もっと良い人材も、いるはずではありませんか?」


 概ねこのような意見が、次々とでてきたのです。

 これを劉総統が、

「確かに身びいきとは儂も思う、しかし志玲は芙蓉とは違う、この度の四級市民対策、はっきり言えばミコ様への奉仕を義務とする」


「望んで奉仕させる、相手はナーキッドの単為生殖装置を提供しなければ成立しない女ばかりの世界、ほぼ対策は成功しかけている」


「つまりミコ様は芙蓉と志玲を代価としてもらった以上、何が何でも一級にしてやるといわれているのだ、要は失敗するな、下手を打つなといわれているのだ」


「しかし芙蓉様ならいざ知らず、志玲様で大丈夫なのですか?」

「諸君、芙蓉も志玲も寵妃である、寵妃の失敗はテラ・メイド・ハウスのウェイティングメイドにとっては、あってはならないこと、失敗しても不問に付されるはず……」


「その場合、一級にはなれないが……今の生活を取り上げられることは無い……」

「しかし別の誰かが失敗すればどうなるか……ミコ様は多分何も言われないが、ナーキッド内部では我らへの干渉が強化される話が持ち上がる……」

「なにが起こるか読めないのだ……」


 劉総統のこの一言で、会場は静まり返ります……

「この老人に任せてくれないか?先ほども言ったが、リスクは少なく可能性は高いのだ……」


「芙蓉は日本列島対策で手一杯、大陸対策は相手が同胞、日本列島対策に比べればまだ楽なのだ、志玲でもやり通せる」


 これでやっと志玲が、大陸対策の責任者として承認されることになったのです。

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