BONUS STAGE1-⑤~二人の戦士に幸ある日々を!!~

 ――400体撃破!


 ――500体撃破!!


 ――600体撃破!!!


 ――700体撃破!!!!


 ヴァーチャルリアルの立体空間より群がる無数のインベーダー。右往左往に飛び掛かる侵略者を、ただひたすらに撃っては撃破し、撃破しては撃つを繰り返す剣とみのり。

 最早彼らに、時間の経過や立体回転の苦痛など気にも留めなかった。


 今はただ、『ハイパーディメンジョンインベーダー』をクリアするために。インベーダーを1000体倒すのみッッ!!



 ――800体撃破!!!!!



「「ハァ、ハァ……………、ッ!――――」」


 二人の体力、気力、精神力も限界に近づいている。

 互いにゲームのみに集中する彼らに、私語を交わす余裕さえも残されていない。

 プレイする二人の間には、息を切らす呼吸と、時々乱れる集中を立て直す気付けの音のみが聞こえてくる。この気力は確実に好プレイに繋がっていき、遂に―――



 ――――900体撃破ッッ!!!!!!



 ……何故、まだ無名の学生プレイヤーがここまで来れたのか。たかがゲームにここまで情熱を燃やし続けるのか。そんな事は論理的に考えても無駄なこと。


 二人の中に秘めたゲームに掛ける闘争心と、という強い気持ちが、超次元インベーダーを圧倒していったのだ。


 しかも砲台の残機、3基で挑むインベーダーゲームで未だにミスはゼロ! これはいける――!!



 ……と希望が見えてくるなか、最後のブレイクタイムの休憩で、二人とも意外な感情が沸き上がってきた。


「………ねぇ剣くん。こんな時にこーゆー事言うのあれなんだけれど……」


 みのりは息切れぎれで満身創痍のなか、思いきって剣に話しかけた。


「……………何や?」


 満身創痍は剣も同じこと。首をみのりの方へ傾けて呟くだけで精一杯だ。


「私ゲームは好きだけど得意じゃないし、剣くんみたいにカッコいいプレイなんか出来ないけど……剣くんと一緒にゲームしてみて、私分かったの!


 ――下手とか弱いからとか関係ないんだ、ゲームは誰よりも楽しんでやってるのが一番カッコいいんだって!!」


 スペースインベーダーでも楽しそうにプレイしていて、そして共に超次元インベーダーに挑んでいても、未知の体感に心の底から楽しんでいた剣を見ていたみのりは既に悟っていたのだ。

 その時疲労で余裕が消えていた筈の剣が、自然と笑顔を取り戻していった。


「………せやで、ゲームは楽しくやらな! 強さとか勝ちに拘っている奴らにはわかんねぇ『楽しい』って感情が、ゲームにゃ沢山籠っているんだ!!


 それをまた教えてくれたのは……みのり。お前と出逢えたからなんだぜ―――ッ!!」


「!!」

 剣とみのりが、互いに真っ直ぐな眼で見つめあった。


 過去に一人でゲームしていた時とはまた違う感覚、彼となら、彼女となら――――クリア出来ないゲームなど、無い!!!


「……じゃ残り100体、本気出して行くか! みのり!!」

「OK! 任せて、剣くん!!」


 二つの砲台に相対するように、二人のゲームに挑む戦士が親指を立てて絆を確かめあった。


FINAL GAMEファイナルゲームREADYレディー!?』


 インベーダーの最後の猛攻を知らせるアナウンスが空間に響き渡る。

 気合上々、やる気上等!!二人の間に迷いなど……過去の底に捨てた!!!


『GO――!!』


 銀河の果てから超速スピードでインベーダーの群れが接近してきた!

 スペースインベーダーのラスト一匹のクレイジーなハイスピードな動きにも似た狂乱の速度、それに屈せず双砲はビームの火花を散らす!!


 まさに砲台とプレイヤーは一心同体!両者とも立体回転の遠心力をものともせず、360度駆け回るインベーダーを撃ち落とす!!

 まさに絆のダブルトルネードが、VR宇宙の中で炸裂する!!!


 残り50匹!!時折不意討ちしてくるインベーダーの放射線ミサイルを砲台のビームで相殺し、追撃で確実にインベーダーを仕留める!


「まだまだ、こんなもんじゃねぇぞォォォォォォッッ!!!!」

「こんにゃろォォォォォォッッ!!!!」


 剣とみのり、気合もテンションもMAX状態!!


 ゲーム空間の外にもその覇気が溢れ落ち、傍観するプレイヤーを心揺すぶられるようなプレイが続く。

 このままこのゲームが終わって欲しくはない、あの二人のプレイをもっと見ていきたい!と思う気持ちが騒ぎ立てていく!!


 だが二人の絆は十分伝わった、侵略者の銃撃戦はもう終わりだ。

 インベーダー全滅へ、カウントダウンッッ!!!!


 990、991、992……


「ッッ……!!」


 極限状態の体力に剣が一瞬、目の前が遮断されたような感覚に陥る。



 993,994,995,996……



 安心するのはまだ早い、楽になるなら1000体倒してからくたばっとけ!と自分の中で言い聞かせる。

 


 997,998………




「………ゲーム戦士、舐めんなァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!」



 ――――999、ラスト!!


「「!!!???」」


 最後の一匹、VRビジョン全体を埋め尽くす”巨大カニインベーダー“が迫る!!!


 ――どうやって倒す? いや、そんな事考える暇なんか無い!! どうせやるなら……

 剣とみのりは互いに眼を合わせ、頷き、最後の合図を送った――!!




「「せぇぇぇぇぇぇ、のッッッッ!!!!!!」」


 ―――――チュピキィィィィィィィィィィィン!!




 砲台、同時発射!!!


 二つのビーム粒子が途中から一つに混じり合い、最大級のビーム砲で巨大インベーダーに直撃した!!



 ――――――――――ピキュン!


 最後の電子音、その刹那な音の如く、呆気なく末路を迎えた1000体目のインベーダー。



 そして………それを祝福するメッセージ。


『【ハイパーディメンジョン・インベーダー】、GAME CLEARゲーム・クリア!!』



 ◇◇◇


 ――ゲームを終え、漆黒のVR空間から解放され、かまくら状の透明ガラスからは開放された電脳の太陽が二人のプレイヤーを照らす。


 ――ピリリリリ………


「う、ん………」

 剣達はプレイギアのクリア報酬通知音で、砲台の中で気絶していた体を起こした。剣に無意識にプレイギアを開くと……


 ◆――――――――――――――――――――◆

 ☆桐山剣/プレイヤーレベル:12→14

[プレイヤーステータス]

 ・アクション:166・シューティング:151

 ・ロールプレイ:168・タクティクス:179

 ・スピード:158・ブレイン:153

 ・ハート:154・ミュージック:142

 ・ラック:177

[プレイヤースキル]

 ・【エース・スラッシュ】

 ・【精神統一】(New!)

 ◆――――――――――――――――――――◆


「新しいスキル……?」

 剣は新しく入った【精神統一】というスキルをタップして詳細を調べた。


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ◎プレイヤースキル◎

【精神統一】

 ・このスキルを発動する時、

 精神を一点に研ぎ澄ます事で、

 プレイヤーの五感全てを最大限

 に高める事ができる。

 ◇――――――――――――――――――――◇


 プレイヤー自身の能力を一時的に高めるスキル。それをレベルアップによって手に入れた事と、プレイギアの未受取・受信ボックスからゲームのクリア報酬として30000円の電子マネーが送られていた。


 これによって剣の薄れた意識から現実へ呼び戻した。


「あ、そうか……! 俺達インベーダーにクリアしたんだ!!」

 やっと現実を知った剣は疲れで襲われた眠気を一気に覚ました。


「オイみのり、見てみいや! 俺達クリアしとったで!!」


 剣は眠っていたみのりの体を揺さぶって、プレイギアを見せた。

 剣のプレイヤーステータスからは『ハイパーディメンジョン・インベーダー:クリア』と記されていた。


「……え、ということは私も!?」


 急いでみのりも自分のプレイギアを開いて確認する。問題ありません、ちゃんとありましたよ。クリア報酬に『ハイパーディメンジョン・インベーダー:クリア』!


 そしてプレイヤーステータスも……


 ◆――――――――――――――――――――◆

 ☆河合みのり/プレイヤーレベル:1→4

 [プレイヤーステータス]

 ・アクション:111・シューティング:113

 ・ロールプレイ:116・タクティクス:112

 ・スピード:110・ブレイン:114

 ・ハート:120・ミュージック:111

 ・ラック:115

 [プレイヤースキル]

 ・なし

 ◆――――――――――――――――――――◆


 一気にレベルを上げて著しい成長を見せたみのり。そして初めてゲームワールドでゲームをクリアした事で彼女はこの上なく喜んだ。


「やったな、みのり! ゲームワールドでの初クリアだ!!」

「私、ホントにクリアしたんだ! 剣くんと一緒に勝ったんだ!! こんな嬉しいことはないわ!!!」


 剣と手を合わせハイタッチしながら「キャー☆」とばかりにはしゃぎ通した。

 そして感無量になりつつも、改めて自分の目標を見つめ直す剣。


「……いつか俺達もさ、こんなゲームもちょいちょいとクリア出来るような『マスター・オブ・プレイヤー』になれたらいいよな………」



「“なれたらいいな”? そんな小さい事言わないの! 剣くんは絶対に『マスター・オブ・プレイヤー』になるんだから!!

 唯一無二のゲーム戦士の王者になるのは剣くんだよ! 私が保証するわ!!」

 みのりは剣の背中にガバッと乗り掛かりながら、剣を勇気づけていく。


「………へへっ! じゃ俺がそれになるときゃ、みのりもしっかり見届けてくれよ。約束だかんな!?」

「勿論だよ! 盛大にお祝いしてあげるんだから!!」


 そして二人はぎゅっと互いの両手を握手しあい、友情を確かめあった。


 ――これからも二人で一緒にゲームをやっていこう!!


 そういった感情が一致して二人に疎通しあった。


「――――これからも宜しくな、みのり!!」

「うん! 宜しく☆」



 果たして、二人の間にこれから先どんなゲームが、ゲーム戦士が待ち受けているのか!?

 いざいかん、未知なるゲームワールドへ、二人のゲーム・ウォーリアーに幸あれッッ!!

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