BONUS STAGE1-④~超次元へのチャレンジャー!!~

 超次元ゲーム時代に進化したインベーダーゲーム、『ハイパーディメンジョンインベーダー』に挑む剣とみのり。


 コクピットとなる2基の立体回転する砲台に乗り込んだ二人。ゲームスタートし、早速に彼らを待ち受けるものとは……?


「……あれ、インベーダー出てこないよ?」


 ゲームスタートしてから数十秒経つが、未だに標的となるインベーダーが一匹も出ていないのだ。

 剣もみのりも初挑戦となるこのゲーム。当然これから起きる展開を知る由もなく、ただただ球体砲台の周囲に広がったホログラフィによる真っ暗なゲーム画面を警戒する。


「………みのり、何か聞こえへん?」

「えっ?」


 ――――ズッ、ズッ、ズッ、ズッ……


 剣の耳から微かに聞こえたのは、インベーダーで聞き覚えのある4ビートの重圧感のある電子音。そこから奏でる何かが迫り来るような音。


 それは、あの55匹のインベーダー軍が迫りくるプレッシャーを与える音である。



「――――――インベーダー来たで!!」


 剣は遠く前方を指差す。目を凝らしてみのりも確認すると……見つけました、ドットから拡大されるが如く迫りくるカニ型のインベーダー、タイ◯ー印だ!!


「余計なこと言わなくて良いから」

「みのり、んな事言うてる場合ちゃうで。早く仕留めな!」


 剣は咄嗟に砲台に設置されたツインビーム砲の発射ボタンを押して、遠方のインベーダーを狙って討伐。

 ピキュンピキュンと爽快感を与える撃墜音も、オリジナルとは比べ物にならない高音質なクリアサウンドに進化。これが二人のゲームへの闘志を注ぎ込んでいく。


「よーし、私も!!」

 みのりも周囲を見渡しながらインベーダーを探す。


 砲台のコントローラーは二つのアナログスティック、その各スティックにビーム発射のボタンが同時に搭載されている。

 左スティックで上下、右スティックで左右。これを同時作動させる事で立体回転が可能に、隙のない操作を可能にさせる。


 みのりの慣れない操作にふらつきながらも、じっくり狙ってビームを発射。


 ――ビキュゥゥゥゥン!!


 みのりも何とか迫るインベーダー数匹の撃墜に成功する。しかしインベーダーが進行する音は未だに鳴りやまない。それどころか徐々に音が大きくなっていく。


「え、まだ何処かに居るって事?」


 二人は慌てながらも、慣れない立体回転の操作をしながらインベーダーを探す。すると……


「………うわっ、そこか!!」


 何とインベーダーが居たのは!!


 近距離まで迫ってきたインベーダーに驚きながらも剣は直ぐ様仕留めていった。

 シートベルトをきつく締めた剣の体が砲台ごと真下に移動され、重力の法則により全体重で押し付けられた。


「くぁぁ、体に来るぜ……」

 だが、もう既に悠長な事をやっている暇はない。


 インベーダーの討伐に駆けつけた同胞たちが四方八方、剣達目掛けて迫ってきた!

 前方だけじゃなく、真上も真下も背後からも。これを討伐するということは……?


「俺達がぐるぐる回りながらインベーダーを撃たなきゃいけないって事か!?」


 その通り! 3D感覚で砲台を操作しなければならないのだ!!

 円と円との混じり合う立体回転を見たことがあるだろう、剣達の乗る砲台がまさにこの回転である。


 時に逆さになり、時に宙返りな横回転。立体回転の中にいるプレイヤーはその不規則な回転で三半規管を思い切り狂わせて、メンタルにとてつもないダメージを与える。


 これが『ハイパーディメンジョンインベーダー』の恐ろしさ! 次元を超越したゲーム空間でプレイヤーを苦しめていく!!


 ◇◇◇


 ――着々とインベーダーを倒して3分経過。


(ハァハァ………気持ち悪い……!)


 その危険信号を発したのはみのりだった。



 覚束無いフラフラとした操作が余計に体の調子を悪化させ、船酔いにも似た不快感がみのりを襲っていった。


「………! みのり、大丈夫か!?」


 みのりの不調に対して、剣は激しく回転しながらも平然としている。これが体力の差なのかと言ってる場合じゃない。剣はゲームを中断し、隣のみのりの砲台へと駆ける。


「剣くん、私もうダメ……。ジェットコースターとかこーゆーの弱いの………」


 みのりは息を切らしながら青ざめた顔で応対した。このまま行くと………ダメだ。ヒロインにこれ以上無理をさせると場面的にも最悪な事が待っている。ここを放っておけば主人公の名が廃る。


「――――分かった。みのりはちょっと休んだ方がえぇな。残りのインベーダーの分は俺に任とけ!」


 剣はそう言うとゲームを再開し、彼一人で右往左往に迫るインベーダー共を瞬時に片付けていく。

 ゲームとなると何時にも増して頼もしくなる剣、やるときゃやる漢。いよっ、発展途上の主人公!


「それ褒められてんのか?」


 語り部のノリに首を傾げた剣。……いやちょっと待った。お隣のヒロインが無茶をしそうですよ!


「だ、大丈夫、私なら……」


 みのりの息も荒く、意識も遠くにありにけりな状態と結構危ない状況でありましたが、ここはプレイヤーの闘争本能が知恵を与えたか。

 天井真上、垂直90度まで砲台を上げて上を眺める。そして上からの視線にインベーダーが見えた瞬間に撃つ。


 これならせずにインベーダーも討伐出来る。底意地のマルチプレイか!!


「オイオイ無茶すんなって! ぶっ倒れるぞ!?」

「大丈夫、まだやれるもん! 私はこれで援護するわ。この姿勢のが少し楽だもの」


 人は極限状態にやると予想以上の力を身に付けると言いますが、これもその一片か、ゲームへの好奇心が人の闘争心を強くしたか。


「………すまねぇな。だけど無理するなよ!!」


 みのりの根性に、剣は少し申し訳ない気持ちになりながら、逆にゲームクリアに尚燃える。二人のゲームは続行していく。



 ◇◇◇


 ――――開始から5分経過。剣とみのりは依然としてノーミスでインベーダー達を討伐していった。

 ハイパーディメンジョンインベーダーの変化したゲームシステムはこうだ。



 まず一定時間の経過で出現する『UFO』。これを討伐すると、ランダムに有利になる効果を得られる。


 ①20秒間インベーダーの動きが止まる。

 ②ビームが三方向放射に強化される。

 ③5メートル至近にいる全てのインベーダーを全滅させる。

 と言った能力で一気にインベーダーを討伐させるチャンスを得られる。


 次にプレイヤー達に与えられる『ブレイクタイム』。


 インベーダーを100体倒すことで1分間プレイヤーへの休憩時間が与えられる。ただし先程のみのりの不調で一時中断する時は特例としての処置なので、カウントはされません。


 しかし、問題なのはこのインベーダーゲームの”クリア条件“。

 1面、2面といったステージ制では無いが、代わりにその条件がとてつもなかった。その内容は後述して説明していきましょう。


 そんななか、現在複数のインベーダーを倒し、ブレイクする剣達。


「―――気分は大丈夫か? みのり」

「うん、大分良くなった! ゴメンね、剣くんに余計な負担かけちゃって」

「気にすんなよ! お陰で大分コツが掴めてきた」


 互いにフォローしながら順調に進んでいった二人に余裕の顔が浮かび上がる。


「………ねぇ、このゲームどうしたらクリアになるのかしら?」

「あ、そーいや確認して無かった! 今のうちに調べておかなきゃ………………」


 剣はインベーダーのルール解説でクリア条件を確認した途端、剣の顔が急に深刻になっていった。


「――――みのり、砲台のコントローラーのデジタル表記に数字が書かれてたろ? 幾つになってた?」


「え? えーと……『300』ちょうど!!」


 みのりのコントローラーに書かれたデジタル数字、これはインベーダーを討伐した数を表している。


 剣がルール解説にて確認したのは、このゲームがスコア制ではなく、『討伐したインベーダーの数がノルマに達した時』がゲームクリアとなる条件である事に気付いた。そしてそのノルマ数は………



「ゲームクリアの条件は、【1000体のインベーダーを倒すこと】。つまり、あと残り700体……!!」

 二人はこの事実を受け入れた後、互いの顔を見合わせた。



『――――GAME AGAINゲーム・アゲイン!!』


 音声アナウンスと共に、例の進行音とインベーダーの群れがやってくる!



「剣くん……まだ、やれる?」

 みのりはコントローラーを握り締めながら、隣の剣に確認を取った。



「やるしか………ねぇだろッッ!!!!」



 剣の頑なな意志に揺らぎなし。

 願わくは二人揃ってのゲームクリア!!


 そんな二人を前に、超次元インベーダーが更なる猛攻を繰り出す!!!

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