BONUS STAGE1-②~インベーダーは時代を越えて!!~

 伝説のアーケードゲーム、【スペースインベーダー】に邂逅した剣とみのり。

 だが、レトロだと思って舐めてかかるのは大間違い。みのりは侵略者インベーダーの力にあっという間に圧倒されてゲームオーバー。


 そんなインベーダーに今度は剣が挑む。


「剣くんはインベーダーゲームやったことあるの?」

「まぁね、大阪・新世界のゲーセンで良うやってた」


 剣はそう言いながら、ショルダーバッグから財布中の100円硬貨を取り出して、指で硬貨を弾きながら投入口にスポッと吸い込まれるように入れた。そしてスタートボタンを押して、画面転換。


 列に並んだ55のインベーダーが剣を歓迎するように現れた。


「別に歓迎される筋合いはねぇけどな! 行くぞ、ゲームスタート!!」


 砲台も現れてスタートしたその刹那……


 ――――シュバババババッッ!!!

 ――ピピピ、キュン!ピキュン、ピキュン!!


(は、速い……!!)


 目にも止まらぬビーム発射ボタンの連射に吃驚びっくりするみのり。


 早くも一列目の5匹のインベーダーを撃墜し、剣は防御陣地のトーチカに砲台を隠しながらインベーダーの動きを伺う。


(さっきの一列目で射ったビームの数は7発、か……)


 剣はぶつぶつ呟きながら二列目のインベーダーに追撃する。


(8、9、10、11……)


「…………?」


 さっきからビームを射っては、何やら数を数えている剣に、みのりは「何数えてるんだろう?」と疑問に思った。



 そして呟いた数のカウントが『22』まで達した途端に剣は、レバーとボタンから手を離した。


「~♪」


 剣は鼻唄を唄いながら、画面をボーッと見つめて何かを待ちぼうけている様子だ。


「ちょっ、剣くん! 射たないの!?」

「まぁ慌てんな、これから獲物がやってくるから!」

「獲物??」


 暫くはインベーダーが進行する音だけが木霊する静寂のスクリーンに……獲物やつが現れた!!


 ――キュワワワワワワワ!!!


「あっ、UFO!!」


 みのりは画面上方・右横から、甲高い電子音と共に飛び交うUFOを指差した。


「お出でなすったな!!」

 剣の砲台は既に、画面左側にUFOを待ち構えている!!


「必殺の23発目!!」


 行く手を遮るインベーダーのいない上空に1発のビームが発射される!!


 ――バビョョョョョョン!!!!


 ビームがUFOに直撃!!

 MAXスコア『300点』が加算される!


「すごぉい……1発で!!」


 みのりはまた溜め息が溢れ落ちる。


「……さっきみのりがUFO出した時、追うように追っかけてたろ? それじゃインベーダーに不意討ちを喰らわれちゃう。

 だから事前にインベーダーの列を減らしといて、逆の位置で待ち伏せてUFOを撃つ! これが正攻法だぜ」


 やり慣れているとプレイしながら会話も厭わない余裕も出てくる剣。ただ、よそ見が出来ないので若干失礼なのは仕方なし。


「――あ、そーいえば剣くん、さっきUFO撃つ前に何を数えてたの?」

「んぁ? あぁ、俺がビームの発射した数! あれがUFOの点数に関わるんだ。


 ――UFOの点数は『50』『100』『150』『300』のいずれかなんだが、それには法則がある。

 最初の22発まで射って、23発目でUFOを撃てば必ず300点は取れる。後は15発ずつ撃てば300点だ!」

「えー、本当~?」


「まぁ見てなって!ほら、またUFO来たぞ!」


 また上方右から2機目のUFOが出現!丁度次のビーム発射で15発目!

 しかし砲台の前にはインベーダーの壁、先程のように待ち伏せるには少しタイミングが合わない。


「じゃ、これでどうだッッ!!」


 15発目のビームがインベーダーの列の隙間を一直線に通り抜け、UFOに直撃!!


 その撃墜スコアは……【300】!!


「本当だ、ちゃんと300点取れてる!」

「よし、こっからや……」


 インベーダーも残り10体を切った。

 心なしかインベーダーの右往左往な動きに焦りが見えるような、スピードが早くなってきた。


 未だ剣の砲台は一基も破壊されていない。しかしミスを許すほどプレイに妥協するような剣ではない。


 出来ることなら、ノーミスでクリアしてほしい……!!



 降り注ぐインベーダーのミサイル攻撃の雨を避け、それに微かに残るトーチカで身を伏せ、インベーダーに向かい合い確実に1体仕留めては直ぐ様トーチカへ避ける。単純なやり方だからこそ、その作業に怠ってはいけない。ノーミスへの道は繊細、かつ驕り無し。


 インベーダーが減ることに不気味に、無機質にスピードを上げていく。


 そして……残り1体!!


「な、なんて速さ!!?」


 最初の2倍速……いや、10倍速に動くラストインベーダー、その動きは虚脱した狂気を感じる。


(焦るな、待て。UFOの時のように待って、向かい合った所で、勝負!!!!)


 砲台左、インベーダー右。

 迫る侵略者の勢いに対し、ただひたすら待機する防衛砲台。


 それぞれすれ違う時――――発射された!!!




 ――――ピキュンッッ!!!!





 フィールドに残されたのは原型の残らないトーチカの残骸と……一基の砲台! その刹那にゲーム画面から称賛のデジタルメッセージが!!


【スペースインベーダー・CLEARクリア!!】


「………ッッしゃあ!!!!!」


 桐山剣、勝利の雄叫び!!


 ――ピリリリ……!

 クリアと同時に剣のプレイギアに通知音が鳴り響く。


 開いてみると、『クリア報酬:未受取』という通知が。

 その中身は賞金500円とプレイヤーステータスをレベルアップする為に必要な経験値。それらはプレイギアにて受けとることが出来るのだ。


「うわぁ、やったね剣くん! 凄かった!!」

 みのりが後ろから剣におんぶするように抱きしめて称賛を送る。


「ハァ……久々にやってみたけど、やっぱ面白ぇ――!!」

 剣もゲームに本気で楽しんでいた頃の感覚を取り戻したようで感無量の様子だ。


「剣くんも結構レトロゲーム好きそうだよね」

「んにゃ? ゲームだったら何でもするぜ。でもインベーダーはまた格別なんだよ。


 ――俺達よりももっと前の時代のゲーム戦士も、このインベーダー相手に本気で戦って、本気で楽しんでいたんだと思う。

 こうやってゲームの歴史を繋いでいったと思うと、何だかワクワクしちゃってさ!!」


 ゲームに真剣になって、嬉しそうに話す剣を見て、みのりも釣られて満面の笑みを相席して剣に見せつけていく。



「私ももっと面白そうなゲーム、剣くんとやりたいなぁ……!」

 二人の間に優しく暖かい雰囲気が漂った。




「――――じゃ、今度は二人でやろうか!!」

「……ふぇ!? 何を?」




「このエリアにある……”進化した“インベーダーゲームを!!!!」

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