第92話~スナイパーを暴け!!~
――アスレチックとサバイバルシューティングが融合し、大人数のプレイヤー相手に生き残りを掛けて戦う最先端ゲーム『サバイブクロス』。
シャッフル・オールスターズの桐山剣は意気揚々とアスレチックと敵相手に戦う中、対象的にもみのりは、敵ともアスレチックをも避けて森林の茂みで隠れていた。
「私、拳銃とかマシンガンで倒し合うのってあまり好きじゃないもの……」
剣が以前パズルゲームを苦手としてたように、みのりは闘志剥き出しのアクションゲームは苦手。人それぞれに一長一短の向き不向きがあるのです。
「……あら?」
森林の隙間からウロチョロしている敵プレイヤーを見つけたみのり。当のプレイヤーはいつ来るか分からない敵への緊張と不安からか、みのりの事は気づいていないようだ。
「ちょっと狙ってみようかな……?」
みのりはフィールドで拾ったライフル、『M4A1カービン』を見よう見まねで弾を装填してプレイヤーに向けて―――発射した!!
パシュッッ!!!
偶然にも、射撃音を抑えるアタッチメント『サイレンサー』を装着していたライフルから、静かな音を立てて放つ弾丸がプレイヤーにクリティカルヒット!
そのままライフメーターが0になったブザーが鳴ってリタイア。プレイヤーはフィールド外へと強制送還された。
「あ、当たっちゃった……!!」
射的感覚で撃ったみのりは、意外にも弾が敵に当たるとは思わなかった為に驚いた。今の命中で彼女はちょっとだけサバゲーに興味を惹かれたようだ。
すると――?
(あ、剣くんだ!)
どんなゲームでもニアミスしてしまう縁なのか、みのりが居ることも知らず、桐山剣が森林の木々に潜り込んできた。
(よーし、さっきみたいにこっそり剣くんを撃っちゃえ!!)
隙間からクスクスと笑いながら、みのりは今度は剣に目掛けて不意打ち目的にライフルを向けようとした。
……が、みのりの目の前で突然、
――ヒュン!!
何かが風を切る音がして、一瞬みのりの目前の風景が濁った感覚がした。
(え……? 今の何――!??)
みのりは何が起きたか分からなかった。
一方の剣も見知らぬ気配をたった一つの手がかりを頼りにキョロキョロしていた。
ゲームに本気で闘う者・ゲーム戦士だけが感じる事の出来る『PAS《パス》』の波動が――!!
そして――!!
――――パパパパパパン!!!!
「ッッ!!!」
何処からかマシンガンの連射音が剣目掛けて放たれた! 注がれる弾丸の雨にいち早く察した剣は、横一回転に避けてかろうじてダメージは防いだ。
見通しの悪い森林地帯で無闇に攻撃が出来ない剣は、ひたすら森の奥へ逃げていく。
それを追うようにマシンガンの弾が飛び交う!!
(きゃあッ!!!)
マシンガンの流れ弾が、標的とは無関係のみのりにも巻き込まれそうになった。
「大変! 早く離れた方がいいかも……」
みのりの危機管理能力が敏感に感知するように、隙をみて森林地帯を後退りし離れた。
◇◇◇
一方、剣は見えない敵の遠方射撃に振り回されている。
「クソッ! 何処からか狙ってるんだ野郎め!!」
アスレチックの急激な坂を越えながら、ピストル型拳銃・ワルサーP-99と少数の弾数で必死に反撃をする。
だが抵抗虚しく、とうとう弾切れを起こした剣。万事休すか……と思われた瞬間!!
『――サバイバル開始、20分経過。フィールド変更します』
淡々としたアナウンスが流れた途端、鬱蒼たる森林の有機質なフィールドから一転して、鋼鉄の鉄工所のような無機質なフィールドに転換した。
剣はこの時、フィールド変更時に人影のようなシルエットが背後に見えたのを見逃さなかった!!
(……間違いない、俺の近くに誰かが居る! ――そうだ!!)
剣は何かに閃き、フィールドにて拾ったペイントボール型の手榴弾を手に持った。
剣は鉄柱の陰に隠れた。そして目先の風景に一部の濁りが見えた所の足元に目掛け……
「そこだッッ!!!!」
ピンクのペイントが幅広く飛び散った!!
「うわっ!!!」
カメレオンのような保護色に身を纏っていたプレイヤーが、ピンクペイントを身体中被った為に剣の肉眼にくっきりと姿を現した。
「やっぱりPASの力で姿を消していたんだな!」
剣に姿を見破られたプレイヤーは憤っていた。
「……おのれェ! 俺の【ステルス】をこんなペンキ玉で見破られるなんて――!!」
◎――――――――――――――――――◎
◎PAS【ステルス】
・タイプ:アダプテーション
・プレイヤー:
・能力:カメレオンの保護色のように背景に合わせて見分けを付かなくさせる適応型PAS。
その気配と音もなく近づき敵を襲う能力は狩猟ゲームやサバイバルゲームにかなり重宝されている!
◎――――――――――――――――――◎
「良いなぁそのPAS! 人に姿を見られないとか、サバゲーには持ってこいじゃねぇか!!」
驚きとは裏腹に、見たことがないPASに剣は心踊らせていた。
「う、うるさいッッ!! お前みたいな英雄気取りに誉められる筋合いは無い!!!」
ゲーム前に剣に惚れ惚れしていたプレイヤー達とは一転、木枝田は嫌悪感を抱いていた。
「いや、別に俺は英雄になったつもりは……」
「黙れッッ! G−1グランプリで勝ったからってチヤホヤされて、その裏でテロリストに怯えてた俺達の気持ちが分かってたまるか!!!!!」
木枝田の発言に剣は、一転して真剣な目付きになった。
「俺は英雄じゃない。あのテロリストの傍若無人な態度が気に入らなくて、無鉄砲にも喧嘩売った只の一般人だ。でもな、あの行動は決して後悔はしてねぇ!逆に教わったんだ!!」
剣はフィールドに落ちていた『M16A4』を拾い上げ、臨戦体制に入った!
「――――プレイヤーにゃ理屈抜きで、立ち向かわなきゃならない“勇気”が必要だってな!!!!!」
静寂の鋼鉄フィールドに今、2つの熱い火花が飛び散らん――!!!!
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