第87話~好敵手への座標~

 突如、新ゲームとしてクローズドβテストに登場した超次元バトル【AMAZING《アメイジング》】。


 激戦を繰り広げる銃司と渡辺彰、先程のカード発動合戦から暫くして、カードを消費させる事なく初期装備のみで攻撃をし合っている。

 それと同時に両者のEG《エネルギーゲージ》が蓄積されていく。


「オイ、アイツらどーしてカードで応戦しないんだ?」

 動画でバトルの様子を観ていた剣が、槍一郎にせっかちな質問をした。


「このゲームはただカードを使えば良いだけじゃない。時間経過と同時に蓄積されるEGを溜めているということは……決着は近いぞ!!」


 槍一郎の曰く通り、互いのエネルギーゲージは何時しか二桁まで到達。そして戦いのビッグウェーブは渡辺が引き金を引いた!!


「立海ッ、これでもくらえッッ!!!」


『ユニットカード・【大地の巨人ガイア・ジャイアント】!!』


 渡辺が出したカードが発動、その瞬間彼のフィールドに埋め尽くす程の巨大な巨人が現れた!!


「大地の巨人の鉄拳! 【ガイア・スマッシャー】!!」


 銃司目掛けて巨大な鉄拳が、隕石の如く降り注ぐ! その拳が地を直撃し大地揺るがす衝撃波となって、フィールド全体を震わせる!!


 銃司は間一髪避けたが、フィールドの衝撃に巻き込まれダメージを負った!残りHP《ヒットポイント》は500ジャスト!!

 だが銃司は窮地を楽しむが如く、不適に笑う。


「……貴様の本気はそこまでか?」

「何!?」


「貴様の極限など……俺には及ばん!!!!!」


 銃司の反撃が始まった! 銃司はカードを複数枚スキャンさせた。


 3枚のツールカード【ビッグキャノン】、【エクストリームレーザー】、【エンドレスバルカン】をスキャンした直後、3つの武器がしてとてつもない武器に変化した!!


「3枚のカードが混ざりあった!!?」

 剣達はこの光景に目を疑った。勿論渡辺も例外ではない。


「これはカードの組み合わせによって、召喚のセオリーを超越した至高の技に進化する現象!

 ――――その名も、【エクシード・ストライク(超越必殺技)】発動!!」


 そう言った銃司の肩には、ビッグキャノンの10倍の大きさを持った特大のバズーカが出現! エネルギー放出寸前!!



「俺に勝利の道を開けろ、木偶の坊めが!! 【グレイテストバズーカ】、発射ファイアッッ!!!!」


 バズーカに白熱光のような膨大なエネルギーが発射された!!

 物凄い爆音が巨人の断末魔をも打ち消し、渡辺のフィールド全体を覆い尽くした。



 攻撃が止んだあと巨人はフィールドから消滅。そして渡辺一人が力尽きるように倒れていた。HPは0。渡辺彰、超越技に大敗す。



『や、やってくれました! 東京の遊戯貴族・立海銃司の強烈なエクシード・ストライクにより見事、凱旋の号砲を打ち上げましたァァァァァ!!!』


 興奮の絶頂が実況アナウンスから響き、会場内が盛り上がるムードとは裏腹に銃司の表情にはの顔が染み渡る。それは慢心か、それとも実力の格違いからか……?


 その状況を外部から動画で観ていた剣達は、ただただ感無量の域に留まっていた。


「………参った。すげぇゲームだわ」

「この試合で見せた要素はまだほんの一部だ。僕の知る限りではこれでも序の口に過ぎない」

「ま、まだ要素あんのかよ!?」

「あぁ、リリースされる頃にはもっと凄いことになるだろうな」


「私、早くアメイジングやりたいッ!!!」

「あたしも!!」

「こりゃギャラクシーも取り入れられるやろなぁ……」


 オールスターズ全員一致で、アメイジングの虜になったようだ。しかし、この画期的なゲームのリリースはまだ先の話。βテストの結果を十分に踏まえた上で商品化させる。ゲームとは制作する側も大変なのです。




「じゃあ本題に入るんだけど……剣、今度機会が合ったときにまた銃司と勝負申し込まれたんだろう? ゲームワールドの『バスター・キャッスル』で」

「そう! 俺アイツに『それまでに力つけてから来い』なんて言われてもうて。相当余裕かまされた」


「……彼が君にそう言ったのはちゃんと理由がある。それを知らせるために、君と話をしに来たんだ」

「理由?」

「ちょっと君のプレイギアを貸してくれ」


 槍一郎は剣のプレイギアを受け取り、プレイギア内の『プロフィール』を開いた。槍一郎はそれをまじまじと見るなり少し首を傾げた。


「……何か気になる事でもあったん?」

「ちょっとこれを見てくれ、剣」


 槍一郎はプロフィール画面を剣に見せた。


 ○――――――――――――――――――――○

 桐山剣/プレイヤーレベル:31

 PAS:『ロングソード』

 タイプ:アーティファクト/ウェポン

[プレイヤーステータス]

 ・アクション:296・シューティング:276

 ・ロールプレイ:304・タクティクス:312

 ・スピード:289・ブレイン:277

 ・ハート:281・ミュージック:263

 ・ラック:321

 ○――――――――――――――――――――○


 前回のG−1グランプリの激戦でPASの覚醒、更に難関ゲームの勝利によって大幅にレベルアップした剣。


「このレベルがどうかしたのか?」

「今の君のレベルでは、『バスター・キャッスル』は入ることは出来ない!!」


「えぇ、何でや!!?」


 すると槍一郎は、プロフィールから飛んで今度はプレイギアに搭載されているゲームワールドのマップを開いた。マップをタッチスクリーンでスクロールすると銃司のいる『バスター・キャッスル』は、プレイヤーバザールから遥か北の方向に位置する。


「この城に書いてある詳細をタップしてみて」


 剣は槍一郎の言われる通りに詳細へタップする。

 そこには『プレイヤーレベル:50以下のプレイヤー入場不可』と書いてあった。


「プレイヤーレベル50!? そんなにハイレベルなのか!!」

「だから銃司は、君に力を付けろって言ったんだ。城に入る条件を満たない者を招き入れはしないだろう」


 この時剣は改めて実力の格差を思い知らされた。

 以前無謀にも銃司に勝負を挑み、大敗させられた事が当然の結果だったと自分の中で悟った。



「だ、大丈夫よ、剣くんなら! レベル50くらい直ぐ追い付けるわよ」

「心配すんなみのり、足りない分は直ぐにでも取り戻してやる。それに槍ちゃんもそれだけを言うために、ここに来たんじゃないんだろ?」


「勿論。君が直ぐにでも好敵手ライバルの元へ行かせる為の方法はちゃんとある!」

 槍一郎はそう言うと、剣のプレイギアのマップをホログラフィー形式で拡大させた。



「G−1グランプリで残せなかったを、今度はゲームワールド全体で残すんだ!!」



 ゲームワールドのマップに隠された真意、それは剣達、シャッフル・オールスターズにとっての新しい冒険の幕開けとなっていくのだった――――!!

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