第41話~プレイヤーステータステスト~

 ―――ここはゲームワールド『プレイヤー・バザール』のインフォメーションオフィス。


「お待たせしました。皆様の『G−1グランプリ関西予選』のエントリーが完了しました!」

 インフォメーションオフィスの受付嬢が剣達5人、即ち『シャッフル・オールスターズ』のプレイギアを渡した。


「ありがとうございます」

 剣は礼を言うと、そのまま現実世界へ送還した。


 ◇◇◇


 現実世界へ送還した後、5人は再びギャラクシーに向かっていた。


「ほんで? 何をやるんや槍ちゃん、特訓って」

 剣は、槍一郎にオールスターズの結成を期に特訓をする話をしていた。


 その前に、本来の目的である『G−1グランプリ関西予選』のエントリーをまだ済ませてなかった為、先にその用事を済ませていた。そしてようやく、槍一郎が提案した特訓の話題に入るのだった。


「色々だよ。特に剣には特に徹底的に鍛えるつもりだからな」

「お手柔らかに頼むぜ」


 正直特訓と聞いて、剣にとっては彼に『実力不足』と言われた故に乗り気では無かったが、ゲームとなっては他人事では無いという事は頭に入っていた。


「そんなに堅苦しい事やるわけじゃない。でも剣にとって、一番大事な事をやるつもりだから、そこも頭に入れといて」

「大事な事、ね」


 ◇◇◇


 そして5人は再びゲームジム『ビッグウェーブ』に戻ってきた。

 最早このジムは、剣達オールスターズにとって行動の本拠地となっていたようだ。


「今から僕も含めて全員で、【プレイヤーステータステスト】を行う!!」


 【プレイヤーステータステスト】

 説明は……槍一郎が詳しく説明するでしょう。読者に分かりやすく、お願いしまーす。


「語り部が何か言ってる様だけど……まぁいいや、説明しよう。

 ――そもそも僕ら『プレイヤー』ってのは、当たり前だけど人それぞれにを持っている。その個性ってのは、どのジャンルのどのゲームが上手いかとか、どんなセンスを持ってるか等、十人十色だ。その個性を表す基準として出すのが……プレイギアにも表示されている『プレイヤーステータス』って事だ」


「……で、そのステータスてのはどーゆー基準で出すんや?」剣は話を横入るように質問した。


「『プレイヤーステータス』を表す基準は、プレイヤーの能力と、ゲームを照らし合わせた9つのジャンルから出される。


 ・行動、機動力の『アクション』

 ・連射、命中力の『シューティング』

 ・育成、戦略の『ロールプレイ』

 ・戦術、ゲームセンスの『タクティクス』

 ・俊敏、速度の『スピード』

 ・頭脳、知識の『ブレイン』

 ・集中、精神力の『ハート』

 ・音感、リズムの『ミュージック』

 ・運気、第六感の『ラック』


 ーー以上、9科目!


 これらのデータを出すためのゲームや筆記試験を元に、プレイヤーがどんなタイプかを出すためのテストが【プレイヤーステータステスト】って訳だ!」


 やっぱり、槍ちゃんが説明した方が話の導入的にも分かりやすいね!

「仕事量増やしたくないだけじゃないの?」


 ぎくっ!? いや、何しろ安月給なもので……

「語り部の世界も、世知辛いね」


「まぁ何となく分かったぜ。要するに、俺達がどんなゲームに素質があるのか、改めて確認するためのテストなんだろ?」

「そういう事。そして君達がどんなジャンルが苦手かも見させてもらう。予選まで1ヶ月間、弱点も補ってある程度戦えるようにしないとダメだ。


 ――G−1グランプリは、その9つのジャンル全てが要求されるからな……!!」

 槍一郎の言葉に皆真剣な眼差しになった。


 早速、トレーナーである豪樹の監修のもと、ビッグウェーブの施設を借りてテスト用の機材を槍一郎達と運び、準備を整えた。


「――じゃ、早速テストを始めよう!」


 ◇◇◇


 かくして、オールスターズのステータステストは始まった。9つのジャンルからステータスを計算するためには、通常のゲームとは異なったテストデータ専用のゲームで行う。


 例えば、「シューティング」の場合はコントローラーのボタンを10秒間どれだけ連射出来るかの測定。

「ハート」だと『電撃イライラ棒』。

「ラック」ではコイントスの裏表当て等々。


「最後は性格判定とプレイヤーの基礎を合わせた筆記テストでおしまいだ」

「オイオイ、学校の試験みたいやないか!」

  剣は基本勉強嫌いだった為、渋々ながら筆記テストを受けた。


 ◇◇◇


 開始から約二時間弱、全てのテストが終わり、ただいまデータ集計中である。


「……ねぇ剣くん。筆記テストの最後辺りにあった『ゲームプレイ時の違反行為を3つあげなさい』って問題、何て書いたの?」

 みのりは心配になったのか、試験の答え合わせと剣に質問してきた。


「………あぁ、あれか? まず『プレイ席の独占』、『連コイン』、『相手プレイヤーへの中傷行為』。この3つかな」

「え~? 中傷行為って、剣くんも相手に喧嘩しかける事が多いじゃない!」

 みのりは珍しく異議申し上げた。


「中傷って程でも無いやろ! あれは戦略として相手を煽らせてやな……」

「確かに剣くん、少し性格キツイ所あるもん。大会まで性根叩き直した方が良いんじゃなーい?」


「何やねん、レミまで!!」


「――皆、集計終わったで~。一旦集まってくれ!」


 遠くから豪樹が剣達を呼び掛けた。

 データ集計で一緒に作業していた槍一郎は、メンバーのデータ資料を各自に渡した。


「……チームとしては中々バランスが取れているようだが、個人で見るとやっぱり長所が明確な分、弱点がはっきり出とるな」

 豪樹は自分のデータを見ながら、チームとして簡単な感想を述べた。


「あたしも。こーゆーのってあまり良くない傾向なの? 槍ちゃん」

「いやそんなことはない。自分の好きなゲームに対する個性がしっかり持てている証拠だ。だがその分足りないものは補わないと」


「それを補うプログラムは立ててるんだよな? 槍ちゃん」と、半信半疑に問い詰めるのは剣。


「当たり前だ。それぞれ各自に合わせたプログラムを豪樹さんから伝授させる。ジムの信念である『心・技・体』の強化を中心としたものを、皆にやってもらうから。勿論僕と豪樹さんも」


「かと言うて、皆にごっつ筋トレさせるつもりはないで。まずは精神力とか、プレイヤーとしての心構えを中心にトレーニングさせる。特に、剣をな」


「……え、俺!?」

 剣はいきなり指摘されたのでびっくりした。


「そうだ。剣は普段でも短気で相手を見下してる感じが僕にも見えてるからね。それに対戦相手に挑発はする癖に、は中学生並に弱そうだ」


(うぐっ……最後は余計だろぉ!?)

 槍一郎の一言に剣は図星を突かれ、他のメンバーも苦笑していた。


「とにかく、他の皆は豪樹さんの指導で各自トレーニングだ。剣、君は僕と一緒に来てくれ」

「? ―――あぁ分かった」



 ―――剣と槍一郎はビッグウェーブの何もない空き個室へと向かうのだった。

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