第39話~超次元ゲーム時代の異変~

「あの…失礼ですが―――今、大会は『最後』って言いましたか??」


「せや、まだ確定じゃ無いんだが…このまま行くとG-1グランプリはおろか、ゲームワールドそのものが可能性が出てきとる」


「そんな!!!――それじゃ僕らプレイヤーはどうなるんですか!!?」


「まぁまぁ落ち着きなさい桐山君!まだ確定じゃないんだから」

 興奮する剣を角田代表はなだめた。


「……でもそんな事態に陥るって事は何か理由があるはず。

 ――プレイヤー達の間で何かあったんですか角田さん?」


 角田は剣が質問をしてきた途端に、深刻な顔をして返した。



「………桐山君、この事件全ての根元はが関わっているんや!!」



「サイバーテロリスト………!!??」


 剣はあまりの驚愕に絶句した。


伊火様いかさま』や大人のチンピラ集団とは訳が違う。

 ルールや秩序を平気で破り、己の手を犯罪で黒く汚す不届きな連中がこの時代にも複数隠れて悪巧みをしているのだ。


 今回の件はWGCをも手こずる程の厄介な相手であった。どんな事をしているのかというと……?


「『チート行為』ってのは知っとるな?桐山君」


「………えっ!?あ、はい多少は……」

 絶句してしばらく意識がとんだ剣はまた我にかえった。


「『チート行為』ちゅーのはゲームのデータやプログラムを改ざんして、正規のプレイでは本来出来ないことを不正に出来るようにする行為の事を言う。

  奴らはそのチート行為を繰り返し、名声を奪い取り、数々のゲーム管理を崩壊しおった!そんな事をしたらどうなるか……

 ―――ゲームワールドの管理をするWGCへの損害だけでなく、プレイヤー全員の尊厳や秩序が崩壊する危険性もある!!最悪の場合、――!!!」


(………オイ、マジかよ………!?)



 相当深刻な問題であった。身勝手なプレイヤーのチートプレイが他のプレイヤー達の居場所を奪っていく、許しがたい行為だ。


「………ちょっと待ってください。じゃ何のために不正防止機能や、槍一郎みたいなオフィシャルプレイヤーがいるんですか!?

 こんな大事態防げないんじゃWGCも立つ瀬がありませんよ!!」


「それを掻い潜る裏工作もしてあるんや。チート行為の証拠を消すために防止装置を細工したり、証人の口封じに蒸発したケースも出とる」


 ゲームの問題に冗談では通じない展開までエスカレートしていた。


「本物の犯罪集団じゃないですか!!どうしてそこまで――!?」


「……分からん。だが言えることはそれだけゲームの魔力は恐ろしい事や。

 ギャンブル狂が犯罪に手を染めてまで金を求めるように、意地でも勝ちを求めたがる。

 それともこの『超次元ゲーム時代』と呼ばれている時代を良しとしない者の復讐か……!!」



(――そんな奴らの為に、俺達プレイヤーの居場所を失われるのを黙ってみてろって言うのか……!!!!)


 剣の心理が不安から怒りに変わった。好きなゲームを奪われる事にどうしても剣は我慢ならなかったのだ。


「角田さん、何とかならないんですか?確定じゃないなら防ぐことは出来るんですよね!?」



「懸命の調査はするつもりや、だがわいはそれだけでは足りないと思っとる。

 プレイヤーが仕掛けたチート行為は同じプレイヤーが立ち向かう必要もある。

 ――そう、桐山君のようなプレイヤーが必要なんや…!!」


  (―――!!!!)

 剣の中に何か光が指すのを感じた。


「………おっと!話が長くなってもうたわ。時間裂いて悪かった。桐山君、G-1グランプリ頑張りなはれや!!」


「――――はい……」

 剣はすっかり力の抜けた返事で返した。


 今の剣はG-1グランプリへのエントリーどころではなかった。事の重大さに背中から押し潰されるような感覚を味わった。


 だが昔の一人だった剣ならこのまま終わっていたであろうが、今は違う。

 様々なゲームを通じて繋がった『仲間』がいるのだ。


「早く皆にこの事を伝えないと――!!」



 ◇◇◇


 直ぐ様剣は現実世界に送還し、みのりや槍一郎を集めて桐山家でこの事情を一部始終話した。



「そんな……ゲームワールドが無くなっちゃうの!!?」


 みのりはこの状況に混乱していた。

 その様子を見守っていた剣の祖父矛幻は、この事を知っていたようだった。


「………あの連中は最近になって大会や各ゲームで犯行を始めたんだ。最初はごく一般な一人のプレイヤーから始めた悪行が同胞を増やして今やWGCの驚異となっている。

 何とか槍一郎君のようなオフィシャルが証拠に残そうとしても、二重三重と妨害が張り巡らせて対処が出来ない。恐ろしい奴らだ」


 そして剣と同じように怒りを溜め込んだ者がいた。槍一郎だ。


「僕らオフィシャルプレイヤーが何も出来ないでアイツらの悪行がエスカレートしているのを思うと……僕も悔しすぎる――ッ!!」


 槍一郎の両手の握り拳がワナワナと強く握りしめて、テロリストにかませられた怒りを表す。


「でも、このままじっと見てるわけにはいかないわ!!剣君、どうしたらいいの…?」



 みのりが不安になるなか、剣の心の縁には既に相応のが出来ていた。

 


「……一人の無名プレイヤーが始めた犯罪を、同じ無名のプレイヤーである俺達が覆せない筈はない―――!!」



「剣――!?」


 槍一郎やみのりには分かった。

 一番怒りを込めているのは剣だと言うことを……!!



「俺達はゲームで繋がってここまで来たんだ!そのゲームの居場所をあんなエゴイスト共に潰されてたまるか!!

 俺達が『マスターオブプレイヤー』になるためにも……俺はあのテロリスト集団をぶっ潰す!!!

 ―――みのり、槍一郎…俺に力を貸してくれ!!!!!」



 剣の渾身の叫びに二人の魂が響いた!!



「……よし分かった!!僕もプレイヤーとしてのプライドにかけて力になるぞ!!!」


「私も!!これはゲーム時代に関わる大事な事ですもの!!!」



 ―――やってやるぜッッ!!!!!



『超次元ゲーム時代』と呼ばれる時代の狂乱の渦に今、3人のゲーム・ウォーリアーが立ち上がった!!



 プレイヤー達の未来を掴むために……!!

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