第22話~サイバーターボシティは止まらない~
ゲームワールドオンラインには、ゲームの数だけ冒険があるように、ゲームの数ほど未知のエリアが広がっています。
――ゲートを開けば、アクションゲームのジャングル。
――またゲートを開けば、パズルの大規模工場。
このような地球規模を誇るVRMMOであるゲームワールドオンライン。それら各エリアの情報は数々あれど、その全てを知る者はいない。
そして今日もまた、この仮想空間の世界に全国80億以上のゲームプレイヤー達がゲームに挑み、時に競い合っている。
ゲームクリアで与えられる報酬で賞金を稼ぐプレイヤーもいれば、プレイヤーステータスでレアなスキルを当てて、高みを目指すプレイヤーとそれぞれ秘めたる思いは十人十色。
勿論ゲームウォーリアーの主人公二人も例外ではない。未来のゲーム戦士・剣とみのり、さらなるゲームを求めてまたまた現実世界からデータ転移されて、電脳世界にダイブしてきた!
「よっしゃ、着いたで!」
剣がプレイギアからインストールされたゲームワールドのマップから展開されるハニカム状に設置されたゲームエリア。
拠点となる『プレイヤー・バザール』から直線北の方向、ゲートを開いた瞬間から喧しく鳴り響くエンジンの轟音爆音。天翔ける龍の如く果てしなく続くマシンのホライゾン。常闇の夜空にネオンが照らされるメガロポリス、超音速のマシンの残像弧線が都市を彩る摩天楼!
「ここがレースゲームで造られた未来都市―――」
「そう、【サイバーターボシティ】だ!!」
ゲームワールド・新エリア【サイバーターボシティ―CYBER TURBO CITY―】!!
スーパーカー、フォーミュラ、オフロードバイクと、風を切り裂き我道を突っ走るレースゲームエリア!
ここに来ればプレイヤーは皆スピードを追い求めるレーサーとなる! ただひたすらエンジンを唸らせ、チェッカーフラッグまで突き進むのみ!!
未来を生きるゲームプレイヤー達のスピードに乗れない者は、時代にもレースにも乗り遅れるだろう……!!
「ここでプレイしてる奴らって大体気性が荒くてヒャッハーなスピード狂やからな。変に絡まれないように気を付けろよ」
「そーゆー剣くんこそ、煽られてトラブルになることは止めてよ! 貴方いっつも喧嘩っ早いだから」
「わーったよ!」
短気は損気。若さ故の血の気の多さと浪速節の意気から喧嘩腰が目立つ剣。早速耳タコな忠告だ。
「でも、レースゲームだけでも沢山あるのね」
「純粋にゲームとして楽しむだけじゃなくて、最近じゃ運転教習とか、F−1のライセンス試験にも使われるゲームもここにあるからな」
教習所と同じくシュミレーションとして、運転をゲーム感覚で学ぶゲームもある。
レースゲームに特化したハイウェイな道路とは別に、スペースを分けて運転講習も出来る。
それ以外にも子供でも遊べるゴーカートや、移動固定型のドライブゲーム等もエリアに設置されている為、休日では親子にも人気のエリアなんだとか。
しかし今の時刻は平日の夜。深夜程では無いが先ほど剣が言ったように、感じの悪い客が多いのが現状だ。
「どのレースにする? 剣くん」
「んー、じゃ基礎から始めっか。変に凝ったのより『F-1レーサー』ならみのりでも行けるだろう」
『F-1レーサー』のゲーム内容は至ってシンプル。
丸みに帯びた長方形型のコースで2周で完走するレースを行う。
速すぎず、コーナリングの回りが利く『Aタイプマシン』。
スピード重視で、破天荒な特攻型の『Bタイプマシン』。
この2台の何れかを選び、ゴーカート運転の要領で多人数でレースをしていく。
推奨プレイヤーレベルは11と、みのりのような初心者にも安心のゲームだ。
「よーし、私やってみよう♪」
みのりは意気揚々と『F-1レーサー』を挑戦し始めた。マシンはAタイプだ。
シンプルだが一往復2キロの長距離コース、そのスタート台に10台のゴーカート。
みのりは後ろから2番目のカートに乗り込んだ。
しかし、同じくカートに乗り込むプレイヤーは陰険なオーラが漂っていた。
『―――READY?』
スタート前のコールアナウンスの後、スタートシグナルが鳴り出す――3カウント!!
『START!!』
スタートブザーと同時にみのりを含めた10台のレーシングカーが走り出した!!
徐々にスピードを上げるレーシングカーの大群。
Aタイプは450、Bタイプは500がMAXスピード。
みのりの順位は今のところ6位、慣れないハンドリングで車体をフラフラながらも頑張っている。ギリギリでコースから外れないようにするのが精一杯。ルーキーレーサーの性か。
「みのり、ドリフト使え! アクセル踏みながらブレーキを同時に踏んで曲がるんだ!!」
剣もコースの外から応援をする。大声で叫ぶ声が強烈なエンジン音の中でも良く目立ち、みのりの耳へと伝っていくわ、
(アクセル踏みながら、ブレーキ……こうね!)
――キュイイイイイイイイ!!
みのりは咄嗟に教えられたドリフトを吸収し、駆使する―――が!!
「きゃっ!!」
後方から来たレーシングカーが後ろから追突させてドリフトを妨害し、コース外の障害物にみのりのレーシングカーがクラッシュ!!
タイムロスで最下位になってしまった。
「――っ! 諦めるな、そのまま行けー!!」
剣はみのりを鼓舞する。みのりもめげずに先を進んだ。
レースは2ラップ勝負。最初のラップはタイムロスもあったがみのりは直線コースでカート群をゴボウ抜きで5位まで浮上、ファイナルラップへ持ち込む!!
先程の妨害も車幅を離しながら交わしていく、みのりの学習能力は人並み以上か。
シンプルな長方形コースを咄嗟に覚えたドリフトで続々と追い上げる。1位まで残すマシンはあと1台! 最後の直線400メートル!!
だが1位のマシンはどういう訳か、直線コースで若干ながらアクセルを緩めてスピードを落としていく。
(あの人、私のマシンに故意に寄せている……!?)
みのりは左へ、1位の相手は右へと並んだ!
しかし右の相手がジリジリとみのりのレーシングカーに迫り、左コース外へ押し寄せる。400キロのスピードでは避けようにも避けきれない!
「―――ダメッ! ぶつかる!!」
相手マシンの後輪がみのりのフロント部分に遂に接触、みのりのマシンはバランスを崩されて再びクラッシュ!
残り50メートルで妨害したプレイヤーが1位を取った。みのりは後から立て直すが、結果は4位だった。
「そんな、酷すぎる………」
2度のクラッシュを受けたみのりは、幸いにも怪我は無かったが妨害の数々に戦意喪失していた。それに対して1位を取ったプレイヤーは汚い笑いを浮かべている。この卑劣な故意プレイを見た剣は声を震わせながらみのりの元へ。
「―――みのり、出るぞ! こんなゲームもうやっちゃダメや!!」
「……剣くん」
「こんなクズの相手なんかすんな! ゲームが上手いとか以前の問題や!!」
剣は怒り心頭、他人を傷付けることも躊躇わず勝利を得ろうとするやり方に我慢ならなかった。
「勝ちばかり拘り続け、他のプレイヤーへの嫌がらせに徹底してまで勝とうとする奴とゲームやる価値はねぇ!!」
他のプレイヤーは苦虫を噛み潰したような顔で剣を睨み付ける。そして剣ら二人はゲームを後にした。
………しかしたった一人、ゲームから離れてこの様子を立ち聞きしていた眼鏡男子が剣達を監視していた。
「――――あれが、桐山剣か………」
サイバーターボシティ、今回はこの眼鏡プレイヤーを軸に新しいゲームが動き出す――!!
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