第23話 就職

 とんとん拍子で就職は決まった。介護、という未知の世界。果たしてあたしは務まるかな。不安はあるものの、しばらくぶりにする仕事には期待を寄せている。


 そういえば死別した元旦那は来月で3年目になる。3回忌に参加しないと。元夫が亡くなったのが11月。実家の方ではいつ法要をするつもりでいるのだろう。電話して訊いてみようかな。


元夫は、あたしの車の運転ミスで亡くなったようなもの。助手席に座っていた彼。眠くて対向車線をはみ出して助手席の方から相手の車に突っ込んでしまったのだ。


 娘とあたしの「平」という苗字は元夫のもの。さくらの苗字が旧姓に変わるのが可哀相だから今でもこのままでいる。


 元旦那には非常に悪いことをしたと思っている。でも、いくら悔やんでも戻ってこない。


 あたしは思い出した。通夜の晩、あたしは気でも触れたかのように泣きじゃくった。自分のせいで夫の命を奪ってしまったこと、自分だけ生きながらえたこと、それぞれが全て自分のせいだと思うとやり切れなさで一杯になる。3年経った今もその思いはあまり薄まらない。むしろ、ああしてあげれば良かったとか、後悔に近いものが心の中に浮かんでくる。


 彼氏の晃に仕事が決まったことを言おう。あたしは、スマートフォンを手に取り彼に電話をかけた。五回程呼び出し音が鳴り、繋がった。

『もしもし、晃』

「おー! 麻沙美、珍しく連絡くれたな」

 あたしは、ニヤニヤしながら話した。

『あたしね、仕事決まったよ!』

「おお! そうか! それは祝いだな! 仕事はいつからだ?」

 晃の表情が緩んでいるのが受話器越しに伝わってくる。やっぱり、喜んでくれた。案の定。

『来週の月曜日からだよ』

「じゃあ、土曜日にさくらちゃんも交えて飯食いに行かないか? 俺のおごりで」

 彼の発言にあたしは驚いた。おごり? そのことを伝えると、

「もちろんだ! 支払いのことなら気にするな。俺に任せろ」

 あたしは嬉しくなり、

『やったー! 晃、ありがとう! さくらも喜ぶよ』

 彼は柔和な笑顔だろうなぁと、想像した。

「何食べたいかさくらちゃんと話し合ってくれ。俺は何でもいいから」

『うん。じゃあ、楽しみにしてるね』

 そう言って電話を切った。


 晃とさくらとあたしの三人で食事。何か家族みたいで嬉しい。別室にいる娘を呼んだ。

「さくらー!」

「はーい」

「ちょっと話したいことあるから来て」

 少ししてさくらは片手に何か持ちながら出てきた。

「どうしたの?」

「お母さんね、仕事決まったよ!」

「ほんと? やったじゃん! 頑張ってね」

 さくらも喜んでくれた。こんな良いことない。後は仕事を続けられれば万事オーケー。

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