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「どういう事なの……」



心臓が、ギュッと掴まれたかの様に痛い。


こんな事では落ち着くはずがないと理解はしていても、無意識の内に胸に手を当てていた。


掌に伝わる鼓動。


私が纏っている黒いワンピースはあまりに薄く、その鼓動は自らの動揺を誇張するかの様にドキドキと掌に圧力を加え続けている。




「気付いては、いませんでしたよね?」



向かいの席に座る男――柴野亮介が落ち着いた声音で問う。


疑問形でありながら、充分な確信を含ませた声である。



「もちろん……マサユキが貴方の事を雇ったの?」



他にはいないだろうけど。


そう思っていたのに、柴野はまるで不変の真理でも語るかの様な調子でこう応じた。




「その質問の答えについては、ノーということになります」

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