第62話〜姿を消したアンデット

…………。

…………。


時は少しばかり遡る。


「これは……どういうことだい?」


《宵薔薇の乙女》のリーダー、ダフネは目の前の光景に思わず疑問の声を上げた。


場所は数日前に彼女たちがアンデッドの大群に遭遇した場所。


そこにはアンデッドはおろか死体の一つもない。


打ち捨てられた馬車を目印にしたため、間違えるはずはない。


アンデッドの残骸など、鳥や獣は近寄りもしない。


まれに屍鬼グールなどがアンデッド同士で喰らい合う現象があるが、その場合はより上位のアンデッドに進化してその場に残るはずだ。


「同族喰らいが進化して特殊個体になったか?しかしその場合はもっと瘴気の密度は上がって、数日程度で移動した痕跡すら消えるなんてことはないはずだけどね」


依然としてその場には濃密な瘴気が満ちているものの、しかし同行している聖職者は付近にアンデッドの気配はないという。


念のため辺りを確認したものの、アンデッドの死骸のパーツはおろか、遺灰すらない。


基本的に焼き尽くすか浄化しなければ倒せず、浄化にしても大量の灰は残るはずだ。


ダフネ達が到着するより前に討伐されたという訳ではなさそうだった。


ここ数日は雨も降っていないし、森の中で人一人分の灰が散らされるには早すぎる。


瘴気が残っていて、アンデッドがいなくなり、灰すら残っていない。


あれだけのアンデッドが集団で移動したとなると…。


「厄介だね…」


…………。


ダフネたちはその時点で知りようがなかったが、ちょうどその頃に現場から離れた位置、彼女たちも通ってきた街道で後発隊がアンデッドの群れと遭遇した。


しかしその数は当初現場にいた数よりは少なかった。


だがその後ポイントごとにアンデッドが現れ、討伐されたアンデッドの総数は当初の予想数を大いに上回ることになる。


そして後発組と合流後、森の腐葉土に微かに残った痕跡が見つかり、掘り起こされたその先にダンジョンの入り口が発見されることになる。


その時点で討伐されたアンデッドの数は100を超えていた。


新発見の迷宮、それは同時にスタンピードの可能性を示唆することとなる。


…………。


時刻はまだ太陽が頂上付近のため、左右の森の中もある程度は見通すことができる。


しかし斥候に出た数名は森の至る所にダンジョンへの入り口と、そこから這い出るアンデッドを確認していた。


「ダンジョンにはいくつか種類があるの」


俺は後発隊の馬車で休憩中に、ダンジョンについて聞いて回っていた。


大休止中に丁寧に教えてくれるのは宵薔薇の乙女の一人、ラナンだ。


ーーーーーーーーーー。

種族:森人族(♀142歳)

名前:ラナン(◾️◾️◾️=◾️◾️◾️=◾️◾️◾️)

階位:42

職業:精霊術師

状態:◾️◾️◾️◾️


腕力:D 体力:D

魔力:A 知力:B

敏捷:C 器用:C

運勢:E

ーーーーーーーーーー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る