第45話〜黒狼の牙

…………。

…………。


迷宮から脱出してから5日。


ようやく街の外壁が見えてきた。


「でかい…」


まだ街まで1時間はかかる距離があるというのに、木々よりも高く、横に何処までも続いている外壁は堂々とそびえている。


「ははは、すげえだろ?あれがパンテラの街だ。王国領でも王都に次いでおっきな街さ」


ベンが得意げにそう言ってバンバン肩を叩いてくる。


地味に痛い。


無くなった左手の方でなく、右肩なのが最低限気を使ってくれているのかもしれないが。


「あそこなら孤児院がいくつもあるし、片手でもやれる仕事が見つかるさ。うちらの拠点の村だと孤児院も仕事がないからね」


「いろいろとすいません」


彼らはわざわざ拠点よりも遠い、孤児院のある街まで送り届けようとしてくれていたのか。


確かに随分と遠いとは思っていたけど。


なんて人が良いパーティーなんだ。


…………。


「身分証はあるか?」


街への入り口では衛兵が、入門者をチェックしていた。


一人が全員の身分証を確認し、滞在期間や目的などを聞いている。


そしてもう一人は馬車の荷台や裏側を確認し、人や違法な物が隠されていないかをチェックしている。


ジュリア曰く、大きな街ではチェックが厳しく、逆に町くらいなら身分証さえあれば問題もないそうだ。


「四人は冒険者だな。パーティーか?ならば登録名を」


「黒狼の牙だ。滞在は今日と明日。ダンジョンでガキを拾ってな。こいつを孤児院に預けたら明日の早朝には出てく予定だ」


「ダンジョンで子供を?」


「ああ。モンスターに襲われた恐怖のせいか記憶もないみたいでな」


「そうか。ならば引渡しが終わるまではしっかり監督しておくように。冒険者のお前たちは出入りに金はかからんが、その子供の入場料は鋼貨3枚だ」


入場料3千円。


意外と高い、のか?


それよりもだ。


入場料を払おうとしているボールスに


「あの、ここまで運んでもらって、お金まで出してもらうのは申し訳ないです。これじゃ足りませんか?」


そう言って拾い集めてきた小さな石の入った袋を差し出す。


この小さな石は魔石といって、ダンジョン内のモンスターの核となっているものだそうだ。


魔石は加工すれば魔道具の燃料になったりと日常生活でも使えるらしく、ギルドで買い取ってもらえるとのこと。


「はん!ガキがいっちょまえに気を使うんじゃねぇよ。そいつはこれから生きてくための足しにしな」


しかしボールスはさっさと入場料を払ってしまった。


「そうそう!ボールスの旦那の言う通りさ!ねぇあねさん!」


「そうだね。まぁ孤児院に居られるのも成人する12歳までだし、今後に備えて貯めときな」


「そう、ですか。ボールスさん、ありがとうございます」


「ふん」


あ、照れてる。

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