第15話 焦るセリアと再び登場するヤツ
歓迎会が終わり、教室へと戻って来ると何故かセリアが顔は笑顔だけれども、とても恐い雰囲気で俺を見つめて来る。
「ど、どうしたんだ。セリア?」
「コウヤくん、熱心な目で生徒会長を見ていた気がする」
俺、そんなに熱心な目で見ていたか?
「さっきクラス表を見に行くときにね、私達あの人助けられたんだよ!」
「えっ!? そうなのぉっ!!」
「おぉ〜、早速セリア恋のにライバルが出来たのかぁ〜!」
「ライバルゥッ!?」
彼女はそう言いながら、目を見開いていた。
「いや、あの人に1年のクラス表が何処にあるのか教えて貰っただけだから。リタ、紛らわしい事を言わないように」
「事実だもぉ〜ん」
そう言って飛び回るリタを目で追い掛ける洸夜と、見えないようにガッツポーズをするセリアがいた。
「はい、みんな注目!」
ルコア先生がそう言うとクラスメイト達が話し声がピタリと止み、視線がルコア先生へと向いた。
「これから外に出て身体測定をするのだけれども、今年から導入されたこのジャージを着て貰いたいのですが、着替えるか着替えないのかは任意なので着替えない人はそのまま廊下に出て下さい!」
そう言うと、周りのクラスメイトはざわついた。
「先生! みんなここで着替えるんですかぁ?」
「女子男子共に更衣室で着替えて貰います。その際は名前順でロッカーを使って下さいね!」
「わかりましたぁ!」
「他に質問はあるかしら?」
先生がそう聞くと誰も言わない。
「ないのなら、準備をしなさい!」
「「わかりました!」」
「あ、リタは廊下で待っててくれ」
「はぁ〜い!」
俺とセリアはそう返事をしてから席を立ち、ジャージを持って更衣室へと向かうと他の連中も戸惑いながら更衣室へと向かって着替えて廊下に出た。
「リタ、お待たせ」
「おお〜! やっぱりコウヤが持っていた服と違ってカッコイイねぇ!」
「ああ、それにこの服着心地がいいぞ」
もしかしたら質のいい布を使っているのかもしれない。もしくはあのダサジャージが費用を抑えていた可能性も考えられる。
「コウヤくん!」
「ん?」
セリア達も着替えたようで、顔をニコニコさせながら俺の元へやって来た。
「セリア、似合ってるぞ」
「こ、コウヤくんも・・・・・・似合ってるよ」
セリアが嬉しそうに答えると、ルノアがセリアの背中から抱き付いた。
「でも驚きよねぇ。コウヤが通っていた学校で運動のときに使用されていた服だなんて」
「セリアに聞いたのか?」
「そうよ」
まぁ、セリアのことだから俺が異世界から来たのを伏せている筈。
「俺の国では学業用と運動用とで分けいるんだ。こう分けていれば服が破けたりすることを心配しなくていいだろう?」
「確かにそうね。それに値段自体も安いから買い替えるときの費用も安く済みそうね」
どうやらルノアも学生服を買い替えるよりも安く済むことを察したようだ。
「しかもコウヤが持っていたジャージより、こっちの方がカッコイイしね!」
「コウヤが持っていたジャージよりカッコイイ?」
「ああ、俺が通っていた学校のジャージはダサイって有名だったからな」
それにこの間デザインを一新するって言ってたしな。
「へぇ〜、そうなんだぁ」
しかしなんだ。ジャージを着ていない生徒が数名いるとはな。学生服の方が安心なのか、はたまたジャージに魔法を付与されているのを信じていないのか。どちらにしても、今は個人の自由だから関係ないか。
「全員揃っているようなので出発しますよぉ! 私の後に続いて下さい!」
そう言うと校庭に向かって廊下を歩いて行き、校庭へと出た。
「あらま、先客が居たようですね」
「おやおや、ずいぶんとまぁ遅い到着ですね」
校庭の外にいたのは何とバ、バァ〜・・・・・・あ、思い出した!
「お前はバイ◯ル先生!!」
「違うよコウヤ、バイオリンだよ!」
「バ◯トルでもバイオリンでもない! バルゲンだっ!!」
ややこしい名前のヤツは俺に身体ごと向けて怒って来て、周りにいる学生達は口を押さえて笑い堪えていた。
「いや、そんなことはどうでもいいから」
「ど、どうでもいいだと?」
「ルコア先生! ここで何をするんですか?」
「ここでは魔法をどれぐらい扱えるのか検索をします! なので、向こうに立っている鎧を着た藁人に向かって自分の得意な魔法を使用して下さい!」
そう言い切った後に、口元に手を当てて顔を逸らした。多分笑い堪えているんだろう。
「藁人の方じゃなくていいんですか?」
「藁人の方だと火の魔法を使った方が燃やしてしまう可能性がありますし、何よりも連続して使えないので使用しません」
なるほどね。用は壊れない前提って訳か。
「他に質問あるかしら」
「ありません」
「なら、1番前の子から甲冑に向かって得意な魔法を使って攻撃して下さい! それと、接近戦が得意な人は近づいて攻撃していいですよ!」
ルコア先生がそう言うと、最前列にいた男子生徒と女子生徒が前に出た。
「好きなタイミングで始めていいですよ」
「土よ、我が槍となりて敵を貫け【ロックスピア】!」
「【ウォーターアロー】!!」
男子の方が土魔法で女の子の方は短い詠唱で水魔法を甲冑人形へとぶつけた。
「あの男の子の方は威力は充分ありそうね。逆に女の子の方は詠唱を省略したせいで威力の方が落ちているみたい。
まぁ本人が慣れていないって言うのが理由かもしれないね」
リタ、お前はいつから哲学的なことを言えるようになったんだ?
「コウヤ、何か失礼なことを考えてない?」
「・・・・・・いや、別に」
そう言ってから目を逸らすと、 やっぱり怪しい! 俺の目線を追い掛けて飛び回る。
「フンッ!? 所詮は学生。キサマらではこの程度の魔法しか使えんようだな!」
「いや、お前は自分の生徒の面倒を見ろよ」
「私の方はもう済んでいるんだ。何処に居ようが私の勝手・・・・・・」
「何を言っているんですか、先生! 俺達の魔法をちっとも見てないじゃないですかぁ!?」
バリカン(?)先生の生徒らしき男子学生がこっちに来て文句を言って来た!
「そうですよぉ! それにジャージに着替えさせてくれないなんて、酷いじゃないですかぁ!?」
「えっ!? 学生服でいるの、バリカン先生に強要されたのか?」
「だ・か・ら! バルゲンだと言っているだろう! わざとか? わざといっているのかキサマは!?」
俺に詰め寄るバリカン・・・・・・ではなくバルゲン先生を余所に俺が目の前にいる生徒に聞くと、他のクラスメイト達が うんっ! と一斉に答えた。
「私も着たかったなぁ〜。ジャージ」
「運動とかした後に汗ばんだままなのイヤだよなぁ〜」
「ああ〜、その気持ちわかるぅ〜」
そんなやり取りをしながら、自分達の担任に批難目を向ける。
「バルゲン先生」
「な、何だ?」
ルコア先生はとてもいい笑顔でバーゲン先生に近づくので、近づかれた本人はちょっとビビっている。
「確か職員会議で、ジャージを着るかどうかは最初の内は生徒の自主性に任せることに決まっていたの、忘れていませんか?」
「あ、それは・・・・・・知っている」
「他の先生達がこの決定を覆したことを知ったら、アナタの立場はどうなってしまうんでしょうね?」
ルコア先生がそう言うと、真っ青な顔をさせていた。
「こ、今回は間違えてしまっただけだ」
「ウッソだぁ〜!? だってさっき知ってた言ったじゃん!」
「そ、それはお前の聞き間違いだろう!」
「本当かなぁ〜? 私の聞き間違いか、他の人にも聞いてみる?」
リタがそう言った瞬間、視線がバージョン先生に集まる。
「まぁ今回は、忘れていたってことにしておきます。次やったら、どうなるかわかりますよね?」
「あ、ああ。次からは注意する」
バージョン先生はそう言うとルコア先生から離れた。
「さて、次はコウヤくん。アナタの番ですよ」
「あ、そうですか。じゃあいきますよ!」
「コウヤ、頑張ってぇ!」
「どうせ・・・・・・いや、何でもない」
周りが色々言っている中、俺はクリスタルブレードを作り上げる。
「ユニーク魔法!?」
「あの剣、綺麗」
そして甲冑の側まで駆け寄ると袈裟斬りで真っ二つにした。
「う、嘘ぉ!?」
「あの甲冑を叩き斬ったぁ!?」
「スゲェ〜!?」
「あの剣、欲しいなぁ〜」
周りの人達が驚いている中、俺はルコア先生の元へと歩み寄るのであった。
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