第32話 夢の中駄爆家

警察官2人が去った後、リタを含めた家族全員で話し合ったが無意味だということが判明してそのまま夕食を食べ、お風呂に入った。


「ん〜、サッパリしたぁ」


でも本当にあの慌て方は何かあったに違いないんだよなぁ。


そう思いながらベッドに座る。


「コウヤ、まだ気にしているの?」


「まぁ、そうだな」


「もしかして、また襲われると思ってるの?」


リタの問いに対して、俺は首を横に振って否定する。


「それもあるけど、俺が一番心配しているのはハゲ校長の後ろ盾は誰なのか? だよ」


「ハゲ校長の後ろ盾?」


「ああ、政治家とかがバックに付いていたら、のらりくらりと躱されるんじゃないか? って思ってな」


政治家の力はスゴイからな。ニュースになっても、あれは誤報でしたって報道するかもしれないし。


「でもでも、コウヤのお父さんが これだけ世間に知れ渡ってしまったら、逃げようにも逃げられないだろうね。 って言ってたよ」


「ああ、そうだけどさ」


「それに、そんなに心配していても仕方ないでしょ。ケイサツカンも 何かあったらすぐに駆け付ける。って言ってたから、安心していいんじゃないの?」


「・・・・・・それもそうか」


俺達家族の何かあれば、すぐに疑いの目を向けられるのは相手もわかっているだろうと思うし。


「ゴメン、俺が神経質になっていた」


「そうそう、コウヤが心配することはないよ。それに今日はもう疲れたでしょ。明日に備えて眠ったら?」


そう言うと、俺の横に座ってジーッと見つめて来た。


「そうするか。リタ、今日はありがとう」


「ふっふ〜ん! そうでしょそうでしょ、何時でも私に頼ってね!」


浮かれているのか、踊るような感じで部屋の中を飛び回る。


「明日に備えて寝るとしようか」


ヌンチャクは明日カバンに入れれば問題なし。


「リタ、今日は何処で寝るんだ?」


「自宅に帰ってから寝ることにするよ。おやすみ、コウヤ!」


「おやすみ、リタ」


リタが自宅に帰って行ったので、俺もベッドに潜り込み目を閉じて眠りに着いた筈が何故か外にいた。


ん、外? ここは・・・・・・夢の中っぽいな。それに目の前にあるのは家? でも敷地が広いから豪邸だなぁ。


『ここが駄爆家だな』


『ええ、ここで間違いないです』


スーツを着た2人の男性が、豪邸の門を見つめながら話している。


『彼らの証言が正しければ、ここにいるのですが・・・・・・本当なんですかねぇ?』


『それを含めて確認する為にここに来たんだろうが。それと不正な金の流れと、この間の不当と思われる退学処分についても聞かないといけない』


『ネットで有名な退学処分のですよね?』


『ああそうだ。俺も話を聞く限り、駄爆がねつ造している気がしてならないんだ』


警察官もそう思うほど、俺の退学処分に不信感を抱いてるのか。


『さて・・・・・・ん?』


『どうしたんですか先輩?』


『おいあれ、息子の無乃じゃないか?』


先輩と呼ばれた警察官が顔を向けている方向を見ると何と無乃が家に帰ろうとしているのか、こっちに向かって歩いて来ているのだ。


『写真と特徴が似ています。ちょっと聞いてみましょう』


『だな。ちょっとそこのキミ!』


『んぁ? 何だよおっさん』


うわ、相変わらず態度悪いなコイツ。


『我々はこう言う者なんだけど、ちょっとお話いいかな?』


『け、警察!?』


眠たそうな顔から一変して目を見開いた状態で警察手帳を見つめる。明らかに動揺している。


『け、警察官が俺に、ななな、何の用だよ!』


『まぁ落ち着いてくれ。キミの父親の事について聞きたいんだけど・・・・・・今家にいるかな?』


『知らない』


『『「え?」』』


無乃の意外な言葉に俺も警察官達と同じ反応をしてしまった。


『いや、毎日家に帰っているでしょ?』


『2日前から家に帰ってなかったから、オヤジが家にいるかどうか知らない』


そうか。コイツ家に帰ってなかったのか。


『そう・・・・・・キミのお父さんにお話をしたいんだけど、呼んで貰えるかな?』


『あ、はい』


無乃はビクビクしながら玄関のインターフォンを押した。


『・・・・・・あれ?』


そう言った後にまた押すが、誰も出ないので今度は連打をして呼ぼうとする。


『留守?』


『お、オヤジは自宅謹慎を言い渡されているから居る筈なんだよ。向こうにだって自家用車があるから出掛けていない筈だ』


確かに無乃の言う通りハゲ校長の車はあるな。でも、何か家のようすがおかしくないか?


『ん〜・・・・・・自宅の鍵を持ってる?』


『あ、はい・・・・・・持ってます』


『じゃあそれで開けて貰ってもいいかい?』


『え、あ、はい』


無乃も警察官に逆らえないのか、それとも何とかなると思っているのか素直に玄関のドアを開けた。


『おーいオヤジ! 帰って来たぞ!』


無乃が声を張ってそう言うが、シーンとしている。というよりも、静か過ぎて不気味に感じる。


『お父さん留守かな?』


『そ、そうみたいっすねぇ・・・・・・あれぇ?』


無乃自身もおかしいと感じ始めているのか、首を捻って考えてる素振りを見せる。


『・・・・・・まぁキミも家の人だから、キミでもいいか』


『へ?』


警察官はそう言うと、捜査令状と逮捕状と書かれた紙を無乃に出した。


『駄爆 無蔵 に殺人未遂罪及び脱税の疑いにより、逮捕と家宅捜査の許可を貰っている』


『そ、そんなっ!? ・・・・・・オヤジが殺人未遂なんて、何かの間違いだろ?』


『いいや、裏も取れている。なのでこれから自宅にガサ入れをさせて貰う。全員、準備をしてくれ!』


そう言うと、何処に隠れていたのかぞろぞろと玄関の前に折り畳んだ段ボールを持った人達が集まって来た。


『午後1時32分。捜査令状に基づき、家宅捜査を始めます!』


そう言うと駄爆家へと一斉に入って行く。


『ちょっ、ちょっと待ってくれ!』


慌てて入ろうとする無乃だが、数名の警察官が静止させる。


『はい、キミは中に入ってはいけないよ』


『あ、で、でも・・・・・・』


『見られたらマズイ物があるのかい?』


『いえ、それは・・・・・・ないです』


口ではそう言っているが顔を青ざめさせて汗を滝のように垂らしているので、正直言ってバレバレだ。


『おい、救急車! 救急車を呼ぶんだ!』


『どうしたんだっ!?』


『男性が2階のクローゼットの中で縛られていた! 暴行を受けた跡があるから危ういかもしれない!』


『何だとぉっ!?』


無乃を抑えていた警察官達全員が無乃の顔を見つめる。


『お、俺はそんな事知らない!』


『警部大変です! 金庫の中身が空になっています!』


『何だって! ヤツめ、金を持ち出したのか?』


『警部、これを見て下さい!』


そう言いながらビニールに入った2枚の紙を持って来た。


「それは! 俺と無乃の答案用紙!」


この家で保管していたのか。


『答案用紙? ん? ・・・・・・なぁこれ名前の部分おかしくないか?』


『ええ、名前の部分だけ書き換えていますが・・・・・・何か書き方がおかしいですね』


『これ、鑑識に回して詳しく調べて貰えるか?』


『はい、わかりました』


彼はそう言うと答案用紙をしまい、何処かへ行ってしまった。


『警部、ちょっとお耳をお貸し願いますか?』


『何だ?』


1人の警察官が警部と言われた人の耳元で何かを話すと、警部は目を見開いた。


『わかった。俺の方でやる』


それからしばらくしてから、救急車が到着して救急隊員が降りて来た。


『負傷者はどちらにいるのですか?』


『2階らしいのですが、詳しくは中にいる警官に聞いて下さい』


『わかりました!』


救急隊員2人はそう言うと、担架を片手に家へ入って行く。


『駄爆 無乃さん。両手を出して』


『あ、はい』


無乃は言われるがままに手を差し出した瞬間、ガチャリッ!? という音がした。そう手錠を掛けられたのだ。


『えっ!?』


『キミにも共犯の疑いがあるから、詳しい話は署で聞こう』


『お、俺は何も知らない! 全部オヤジのせいだ! 離せ! 離せよぉっ!!』


そう言って暴れるが数名の警察官に囲まれているので、すぐに取り押さえられ、パトカーの中へと連れ込まれたところで夢が終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る