第31話 戦闘後の家族会議

タクシーを使って家に帰って来たところまではいいが、玄関を開けた瞬間に母さん飛び付かれた。


おがえりおかえりぃぃぃ! ごうやじんばいじだんだから・・・・・・ふわぁぁぁああああああああああああんっ!!?」


「ちょっ、母さん! 涙と鼻水が付くから離れてくれぇ!」


「ヤダァァァアアアアアアッ!?」


まるで小さい子供のように泣きじゃくる母さんに対して、引っぺがそうとするが姉さんに止められてしまった。


「そんなことしたら余計に泣くから、止めておきなさい」


「え、でもぉ〜・・・・・・」


「それにその制服を着ることなくなるんだし、気にしなくていいんじゃないの」


「そうだよ。気にしない気にしない!」


2人の言う通り、上着とかシャツは構わないけどさ。中に着ているシャツが濡れるのは困る。


「・・・・・・」


「あ、父さん。ただいま」


「・・・・・・」


リビングを指さしている。こっちに来て。って伝えているのだと思う。


「ほら母さん、父さんがこっちに来て欲しいって言ってるから離れて」


「グスッ!? ・・・・・・うん」


そう返事をすると、鼻をすすりながら離れてくれた。


うわぁ、涙と鼻水で制服が想像以上にビショビショだ。汚ねぇ。


そう思いながらリビングへ行くと、今度はテレビに向かって指をさす。


「テレビ? 何かやってるの?」


姉さんがそう言うとコクリッと頷いたのでテレビに近づいてみたら、何とさっきの出来事がニュースになっているではないかっ!?


「・・・・・・ん?」


「スマホを取り出したりして、どうしたんだ姉さん?」


「さっきインタビューを受けたプロデューサーから連絡が来て、今すぐに自分達のニュース番組を見てくれ。って。チャンネルを替えてもいい?」


姉さんの問いに父さんはコクリッと頷いたのでリモコンを手に取りチャンネルを替えたら、何とそこにはガラスドアを車でガシャーンッ!? と割って入って来るシーンが映し出されていたのだ。


「この映像って、もしかして・・・・・・」


「あのカメラマン映像を撮っていたのね」


そしてその後にお面で顔を隠した4人を倒していく俺の姿が映し出されていた。


「アナタ、コウヤがカッコイイ!」


『空手習わせておいて正解だったね』


俺が習いたかったのはジークンドーだったのに・・・・・・。


文句を言いたかったがニュース番組の方が気になるので、お互いを抱き合っている両親をスルーする。


そして最後に犯人の1人が喚きながら連行される姿で映像が終わり、スタジオに切り替わった。


『いやぁ〜、スゴイ映像が撮れましたねぇ』


『ええ、何でも天坐学園の不当な退学について取材しに行ったら、今のような事態に巻き込まれたそうです』


『ええ〜!? ホント、じゃあさっき青年達が言っていた名前って・・・・・・』


『天坐学園の校長の名前だそうです。本人達も事情聴取で認めているそうです』


アナウンサーがそう言った瞬間、スタジオがざわつき始めた。


『じゃ、じゃあ。その校長の差し金でヌンチャクを持っていた子を襲ったって事?』


『そうなります』


『あの、こんなことを言ったら失礼ですけど、彼の自演自作の可能性がある可能性は?』


『その可能性は1%もありません。現に我々も嘘かどうか確認しましたから。あ、ここで一旦CMに入ります』


ニュースに切り替わったのと同時に、俺達家族はお互いの顔を見つめ合った。


「今晩の夕食は、豪華にいきましょうかぁ〜!」


「お母さんはもうちょっと身の危険を感じ取った方がいいんじゃないの?」


ジト目で母親を姉さん。本人は全く気にしていないようすで話し続けた。


「でもでも、もう捕まるんだから安心してもいいねぇ!」


『そうと決まったわけじゃないと思うよ。でも豪華だったらお寿司食べたい』


「じゃあお寿司で決定ね!」


ウチの家族は何てお気楽なんだろう。と思っていたら、ピンポーンッ!? と玄関からチャイムが鳴った。


「はぁ〜い!」


『どうも、天ノ空警察署の者です。少しだけお話しさせて貰っても構いませんか?』


「あ、はぁ〜い! わかりましたぁ〜!」


玄関へ行こうとしたところを 待て待て待てっ!? と言ってえり首を掴んで止める。


「どうしたのコウヤ? そんなに慌てて」


どうしたのコウヤ? じゃねぇよ!


「偽者かもしれないだろ! 俺が出る!」


「ええ〜、さっきここに来るって電話を掛けて来たから大丈夫よぉ」


典型的なオレオレ詐欺のパターンじゃねぇ?


「じゃあ、私もバックアップとして側にいるよぉ!」


「そうして貰えると助かる。姉さん、ヌンチャク」


「はい、これ」


リタは姿を消して、俺は姉さんからヌンチャクを受け取り、右手で持ったまま玄関へと行く。


もし相手が偽者だったら、このヌンチャクをお見舞いしてやる。


「どうも、お待たせしました」


そう言いながら玄関のトビラを開くと、警察官らしき2人はビクッと反応させた。


「ど、どうも。天ノ空警察署の大西と申します。こちらが中山です」


「どうも、中山です」


そう言いながら警察手帳を提示するので、警察官を装った偽者ではないと理解する。


「偽者でなくてよかった」


「まぁ先程あんなことがあったら、用心しますよね」


「アハハハハ・・・・・・疑ってすみませんでした」


「いえいえ、我々は気にしていません。それよりもご家族の方を呼んで頂けませんか?」


ここで話をするのもなぁ〜。


「あの、話が長くなるのでしたら、家に上がって貰っても構いませんか?」


「あ〜、そうですね。周りに聞かれたくない話もありますから、中に入れて貰えると助かります」


「では、どうぞ中へ」


「お邪魔します」


もう1人の方も お邪魔します。 と言って入って来た。


「どうも天ノ空警察署の大西です」


「同じく中山です。よろしくお願いします」


「・・・・・・」(※頷いて挨拶しています)


「こちらこそ、わざわざここまで来て下さって、ありがとうございます。どうぞこちらに掛けて下さい」


2人椅子に腰を掛ける。


「それでもうおわかりになっていると思いますが、今日の12時5分にオフィスビルに車が突っ込んだのをご存知ですよね?」


「はい、ご存知ですよ。私よりも当事者の2人に聞いた方がよさそうですね。コハル、コウヤ、席チェンジ!」


「あ、うん」


「わかったわ」


俺達と両親の席を取っ替えた。


「先程の質問なのですが、当事者なのでよく覚えています。ね、洸夜?」


「ああ、うん」


そうだよ。車が建物に突っ込むシーンなんて映画でしか見たことねぇよ。


「そうですか。当時の状況を詳しく話して頂けませんか?」


「あ、はい」


俺と姉さんはその時のようすを2人の警官に話した。


「・・・・・・そうですか。犯人について心当たりがありますか?」


「「あります。あのヅラを被ったクソ校長、ただ1人です」」


「そ、そうですか」


俺達のシンクロ率に若干驚きつつも、警察官達はいくつか質問をしながらメモを取った。


「最後に何か気になったことがありますか?」


「2つほど、個人的に気になったことがあります」


「何でしょうか?」


「1つ目は彼らが監禁している納錦のことなのですが、無事ですか?」


俺がそう言うと、ちょっと悩んだようすを見せる2人。


「今、私達とは別で駄爆さんの家に向かっているので、すぐにハッキリしますよ。もう一方の気になることは?」


「2つ目は、心配と言うか疑問ですね」


「疑問。ですか?」


「はい、あの犯人グループの1人が去り際に、“自分達が捕まっても駄爆が何とかするから大丈夫だ! ”とか言っていたんですけど。本当なんですかね?

何かこう・・・・・・おかしいなぁ? って思うんですよね」


また狙われるとかそう言う話ではなく、違和感と言うか不自然とかいう感じだ。


「何が言いたいのかハッキリ言いなさい」


「いや、その、姉さん。あのハゲ校長はアイツらに、何しても自分がかくまうようなことをいってたよな?」


「ええ、そうね。それがどうしたの?」


「あんな派手なことをやって上に、ニュースにもなってしまうほどやらかしたヤツらを匿えると思うか?」


俺がそう言うと、姉さんは考え込んでしまった。


「確かに考えてみればそうよねぇ、あんなことやった連中を匿うのは難しいわね」


「仮に警察に伝手があるとしても俺と会ったところで全部自白しているんだから、もみ消すのは難しいでしょ」


「そうね。確かにおかしいなぁって思えるわね」


2人で警察官達をチラリと見たら、コホンッ!? とわざとらしく咳をした。


「そこに関しては我々も疑問に思っているのですよ」


「彼らは知っていることを自分から洗いざらい話ました。

その後に何故か自信満々なようすでいたので、何でそんなに余裕な表情をさせているんだい? と尋ねたら、駄爆がブタ箱に入らないように取り繕ってくれているから余裕だ。って答えたんです」


「4人全員ですか?」


「4人全員同じことを話していました」


あのハゲ校長は警察官のトップクラスとコネがあるのか?


そんなことを思っていたら向かって右側の警察官のスマホが鳴ったので、 失礼。 電話に出た。


「はいもしもし大西です・・・・・・はい・・・・・・はい。はい・・・・・・えっ!? 本当ですか?」


慌てている。どうしたんだろう?


「はい、すぐに向かいます! 中山、すぐに移動だ。説明は車内でする」


「あ、はい!」


2人は立ち上がると、こちらを向いて来る。


「我々は本部の方に呼ばれたので失礼致します」


「お時間頂き、ありがとうございました」


「あ、いえ。こちらこそ、ありがとうございました。玄関まで案内してくるね」


「あ、うん。わかった」


玄関へと向かう姉さん達の姿を見送りつつ、何があったんだ? と思うのであった。

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