第13話 学園長に謝罪をします!

「本当に申し訳ありませんでした!」


リタの治療魔法で顔を治したアニス学園長に向かって、日本人なら誰もが知っている謝罪の姿。土下座をしている。


「いや、油断をしていた私も悪いから、顔を上げてくれ」


「あ、はい」


正座のまま顔を上げてアニス学園長を見つめる。


「さっきの格闘技なのだが、あれは何だったんだ?」


「えっとぉ・・・・・・自分の片手で相手の手首を取って、そのまま回すようにして攻撃を受け流す技、回し受けです」


空手の技の一つ相手の攻撃を受け流す技、回し受けだ。

何で俺がこんな事が出来るのかと言うと、5歳ぐらいの時にブルースリーの映画を見て、僕もあんな風になりたぁ〜い! と両親に言ったら、武道を教えてくれるところを教えてくれたのだが! ブ◯ースリーが考案した武術ジークンドーではなく、琉球空手を教えるところに入れられたのだ!

そんなことを当時知らなかった俺は、これを極めて行けばブルー◯リーになれるんだぁ! と思い一生懸命に取り組んだけど、12歳の時に習っている武術が違うと言うことに気づたのだった。

しかし楽しかったのもあったので、そのまま続けて現在に至る。


で、現在アニス学園長に回し受けを、何故か教えている。


「こうして、回している間に反撃の方が出来てるんですよ。そして、そのまま攻撃を受け流した方の手を引きながら、もう片方の手で殴るという訳ですよ」


「ほうほう、なるほど。面白い武術だねぇ」


どうやらアニス学園長は琉球空手に興味深々だ。


「今度キミから武術を教わろうかな。さっきみたくならないように」


うん、どうやら根に持っているごようすです。


「そ、そう言えば。授業の方はまだ続けますか?」


「いや、そろそろ終わりのチャイムがなるから、この辺にしといていいだろう。休憩していてよし」


「はい! リタ、俺のスマホを持って来て」


「はぁい」


彼女はパッと消えてパッとスマホを傍に抱えて戻って来た。


「コウヤ、アナタのスマホに、ツウチだったけ? それが来ているよ」


通信の事か。


「誰から来たかわかる?」


「私はコウヤの世界の字を読めないから、わからないよ」


「確かにそうだ。ゴメン」


そう言いつつリタからスマホを受け取り内容を確認すると、何と真吾から来ていたのだ。


「真吾からだ」


「「シンゴ?」」


「俺の友人の名前です」


そういえば、この人達は知らなかったんだよな。真吾のことを。


「その四角い板は何?」


うん、セリアに至ってはスマホすら知らなかったな。


「あ、うん。向こうの世界でよく使われている誰かと連絡取る為の、道具って認知してくれればわかりやすいかも」


「へぇ〜」


わかってない。と言うような顔をするが、気にせずにLIN◯のメッセージを確認する。


「えっとぉ〜・・・・・・えっ!?」


書いてある事が本当なら、ビックリニュースだぞ!


「どうしたの、そんな驚いた顔をして?」


「えっとぉ・・・・・・真吾から来た連絡をかい摘んで説明すると、あの校長に協力者が学校に2人いたらしい」


「協力者? つまりお前の汚名を期させるのに協力者がいた。しかも2人も」


「はい、社会の授業を担当している 金刈かねかり 有志ゆうし と、体育教師の 納錦のうきん 伏威ふせい と言う2人です。詳細も書いてあります」


て言うか、俺を追い出すときに両脇を抱えた2人だ。


「内容気になるから教えて」


「リタが言うんなら、ちゃんと説明する。えっとぉ、金刈の方は父親が事業に失敗をしたらしく、多額の借金を抱えたらしい」


「親御様の借金と協力するのに、どんな繋がりがあるのですか?」


「セリア、話の途中で判断するのはよくないぞ」


「すみません、アニス学園長」


シュンとしているセリア。ちょっと可愛いと思ってしまう。


「それで、その多額借金を抱えてから数ヶ月後に亡くなったそうです。もちろんその借金は親族である金刈が引き継ぐことになってしまい、途方にくれてました。

そして今の学校に赴任したときに、校長が肩代わりすること持ち掛けられたみたいです」


「ハァ〜、なるほど。つまり借金を肩代わりする代わりに、手取り足取り働けって言われたんだな」


「その通りです。首の回らなかった金刈は、その条件を飲んだみたいです」


可愛そうだ。と思うが、俺にやったことに関しては許す気はない。


「もう1人の納錦の方は体育、こちらで例えると武術(※本人学んでなさそうだけど)の先生ですね。この人の場合は、教師として赴任して来たと言うわけではないみたいです」


「「教師として赴任じゃないっ!?」」


セリアとリタはビックリしているが、アニス学園長は何かを察したような顔をしている。


「この人場合は、あの校長の用心棒として雇われている可能性が大きいらしい。

現に教員になる為の資格を取得してないから」


「向こうの世界では、教員の資格がいるのか?」


「はい、教員免許っていうカードが必要です」


「そうかぁ・・・・・・」


アニス学園長はそう言うと、何か考えているのかアゴに手を当てた。


「その証拠に町から離れた賭けを楽しむ場所(競馬)に毎週足を運んでいて、さらに風俗店に週1回どころか週4回以上出入りしているのを色んな人が見かけているみたいです。

もちろん、お店に足を運んでいる回数からして、誰がどう見ても普通の教師の給料で行ける回数じゃない。と言えます」


ていうか、真吾。彼らには言ってないけど、納錦が通っているパチンコ店と風俗店まで知ってるんだよ! 本当に何処から情報を得てるんだ?


「そうかぁ」


アニス学園長が複雑そうな顔をしている。


「ふ、風俗・・・・・・」


セリアの方はそういうことに耐性がないのか、顔を真っ赤にさせていた。


「最低」


リタに関しては蔑んだ目をしていた。その気持ちはわかるぞ。


「真吾からの連絡はそれだけです」


それと、 教えてくれてありがとう。 と返信しておこう。


「そうか。いつの間にか時間になっていたから、帰っていいぞ」


「あっ!?」


スマホの画面に写っている時計を見てみると、終了のチャイムが鳴る時間から5分過ぎていた。


「ここで転移を使うとマズイから、理事長室まで付いて来てくれ」


「あ、はい」


俺達はアニス学園長に付いて行くようにして理事長室へ向かうが、その途中の廊下でアゴ髭を生やした男性が現れた途端、アニス先生が チッ!? 舌打ちをした。


「おやおや、アニス学園長ではないですか」


おいおい、目上の人に対して挨拶をなしに、嫌みったらしく上から目線で話し掛けてくんのかよ。


「ああ、今から理事長室に向かうところだ。何かようがあるのか?」


「いいえ、アナタにご挨拶をしただけですが、何か問題でも?」


俺からして見れば大有りだよ。さっき言っていた嫌みが挨拶なわけないだろう。


「そうか、なら私は行くぞ」


「ところで、そちらの見すぼらしい男性は何者ですか?」


「コイツのことか」


「ええ」


俺の姿をジロジロ見て来る割には馬鹿にしたような目で見つめて来るので、正直言ってムカつく。


「新学期に入学をする他国から来た男子だが、何か文句あるのか?」


「いいえ、特には。それでは」


彼はそう言うと去って行く。


「何なんですか、あの人は?」


「ホント、アイツムカつくわね! 顔にウォーターボールをお見舞えしてやろう。って思ったぐらいよ!」


うん、それはそれで問題だから止めてくれよ。


「あの人は ローゼン・バルゲン 先生。魔法学の先生だけど、ちょっと問題がある先生なの」


「ちょっと問題がある先生。見ればわかるわ。私達に対して態度デカ過ぎよ!」


「う〜ん、そこも問題なんだけど、私達生徒を見下すのよ」


それはどの学校にもいるんじゃないかな? 現にあの校長達に舐められていたから、今こういう感じになっているんだけれども。


「そうだな。身分の低い貴族の子や平民に対して態度がデカく、自分より身分が高い家系の子にはよくするタイプだからな」


「身分? あの人、貴族なんですか?」


「ああ、名ばかりの伯爵だ」


「名ばかり?」


俺が首を傾げさせながらそう言うと、アニス先生は ああ。 と言って返事をした。


「ヤツはバンゲル伯爵家の次男でな、長男もまだ家を受け継いでないし、アイツも家から離れてないから微妙な立ち位置なんだ」


「えっと話を纏めるとぉ・・・・・・長男が家を継げばあの人は貴族じゃなくなるってことですか?」


それとも、日本で言うところの本家と分家みたいな感じなるのか?


「いや違う。貴族のままでいられるが、この国の方針上、身分がかなり下がる」


「あの人の場合だと、よくて子爵辺りになれるけど、功績がなければ男爵になるの。でも全く何もしていない人と見なされると、平民まで落とされるの」


多分、全く何もしていない。ってのは、無能だから切り捨てる。って意味じゃないか?


「ああ、ヤツも子爵になる為に必死になっているはずだが、態度があれじゃなぁ・・・・・・」


教員としてどうなのか? と言いたそうな顔をしていた。


「一応ヤツに、これ以上学園内でその態度を取るのであれば、規定に則った対応をする。と警告しておいたから、気にしなくてもいい」


アニス学園長はそう言うと歩き出したので、俺達は後を追うようにして付いて行くのであった。

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