第4話 姉さんが来た!

「あ・・・・・・自宅だ」


さっきまで理事長室にいたのが夢のような気がしたが、ゼウス様やティアラ様を見つめると現実だと認識する。


「そうですよぉ〜。では明日から自分で向かって下さいねぇ〜」


「明日から自分で。って、どうやって行けばいいんですか!?」


「やり方は簡単ですよぉ〜。目を瞑ってから、向こうの世界に行きたい。って思えばいいんですよぉ〜。その後に【転移】って言えば向こうの世界に行けますよぉ〜」


「そ、そうですか?」


女神説明された通りに目を瞑り、向こうの世界に行きたいなぁ。と思ってみたら、頭の中に先ほどまでいた理事長室の風紀が浮かぶ。


「本当だ」


「【転移】と言うじゃないぞ」


「わかってます」


このまま向こうに行ったら理事長先生に迷惑を掛ける。


「目を開けばキャンセル出来ますよぉ〜」


「あ、そうなんですか」


目を開いてティアラ様に顔を向けると、頭の中に浮かんだ風景がフッと消えていった。恐らくこれがティアラ様の言っていたキャンセルなんだろう。


「あと当然のことなのじゃが、転移を使用すると魔力を消費するのを忘れるでないぞ」


「そうですねぇ〜。使い続けると意識を失いますから、気を付けて下さいねぇ〜」


「あ、はい。わかりました」


ピンポーン!? ピンポォーン!? ピンポォーン!? ピンポォーン!? ピンポォーン!? ピンポォーン!?


「何だ何だぁ? 誰が来たんだ?」


インターフォンのボタンを連打しているせいなのか、一定の感覚で鳴り続けていてカオスに感じる。


「どうやら、お主のお姉さんが来たようじゃな」


「えっ!? 姉さんが、ここに?」


今仕事中じゃなかったっけ?


「お前さんのことを心配して来たみたいじゃな。詳細の方は、恐らく両親経由で知ったんじゃろうな」


「え、そうなんですか?」


「それよりも早く、お姉さんをお出迎えするんじゃ。インターフォンの音がうるさくて叶わんわい」


「は、はい」


玄関に行き鍵を開けた瞬間、突然ドアが開き、姉が抱きついて来た。


「洸夜! 大丈夫? 何処か怪我していない?」


今俺に抱きついているスーツ姿の女性は、スタイリストとして活躍している俺の姉こと、海山みやま 千春ちはる である。


「あぁ〜・・・・・・大丈夫、怪我はないよ。それよりも姉さん、仕事の方は?」


「仕事ね。私以外の人に任せたわ! それよりも心配なのはアナタの方よ」


「俺の方は大丈夫。ただ、精神的にちょっとくるものがあっただけ」


普通に高校生活をしていたら、冤罪掛けられて退学。しかもその理由が、校長が自分の学校に通っている息子の赤点をもみ消す為だしな。


「そうなの・・・・・・先ずはリビングに行きましょう。詳しい話はそこで聞くから」


「あっ!?」


今家に神様と女神様がいる。姉さんと鉢合わせしたらマズイかも。


「ん? どうしたの洸夜?」


「いや、そのぉ〜・・・・・・ねぇ」


どうしよう・・・・・・今家が散らかっているから入れられない。そんなことを言っても帰ってくれないよなぁ〜。


「あのぉ〜・・・・・・いつまでそちらにいるのですかぁ〜?」


どうすればいいだ。と悩んでいたら、何とティアラ様がヒョッコリとリビングから出てきたのだ!


「げっ!?」


「えっ!?」


何で出て来ちゃったんですか、この人は!?


「洸夜、この人誰?」


「いや、その!話せば長くなるし、どこから説明すればいいのか、そのぉ〜・・・・・・ねぇ」


ティアラ様に助けて欲しいと思いながら目線を向けたら、気持ちが通じたらしく、コクリと頷いてくれた。


「そうです、私が女神さまですぅ〜!」


色んな意味でダメだった。


「はぁ? 何を言ってるのこの人は。頭大丈夫?」


うん、普通にそうなるよね。


「うぇぇぇええええええん・・・・・・洸夜さんのお姉さんに信じて貰えませんでしたぁ〜!」


「それよりも学校のこと! 大まかな話はお母さんから聞いてるけど、話なさい。詳しくねぇっ!?」


姉さんはそう言いながら、胸ぐらを掴みブンブン振ってくる。


「わかった! わかったから! リビングに行こう!」


その後、俺とティアラ様とゼウス様で何とか落ち着かせた姉を、リビングに連れて行ってこれまでの経緯を話した。


「なるほど、話はわかったわ」


よかった。話のわかる姉で。


「警察を交えて話をしましょうか」


いや、わかってねぇ!


「ストップ! ストップ! マジな話だから信じてくれよ!」


そう言いながらスマホを操作する姉さんの腕を掴み、警察に電話するのを阻止する。


「アナタ騙されているわよ!」


「いやいやいやいや! 騙されてないから安心してくれ! そうだ、これを見れば信じてくれるか?」


手のひらにスーパーボウルサイズの魔力を出して見せると、姉さんはまじまじと魔力の塊を見つめる。


「フンッ!」


あれ? 鼻で笑われたぞ。


「最近のホログラフィック技術は進んでるからね。それぐらいの映像ならカンタンじゃないの?」


「じゃ、じゃあこれは?」


今度はその魔力の塊を結晶化させた。その光景を見た姉さんは流石に驚いていたが、コホンッと咳払いしてから話出した。


「どうやったかは知らないけど、何かの大道芸マジックみたいね。ねぇどうやったの?」


これでもダメか!


「流石洸夜さんですねぇ〜。もう1人で魔力を操作出来るようになったんですかぁ〜」


「それにユニークスキルまで出来るとはのぉ〜」


いやいや、関心してないでこの状況を何とかして下さいよ。


「リタを呼べばいいんじゃないかのぅ?」


「そうですねぇ〜。リタちゃぁ〜ん、こっちに来てくださぁ〜い!」


ティアラ様がそう言うと、光と共にリタが姿を現した。


「お呼びですかティアラ様?」


「はい。アナタの反対側にいらっしゃる、洸夜さんのお姉さんの説得を手伝ってくれませんかぁ〜」


「コウヤさんの姉ですか?」


リタはそう言うと、身体を翻して姉さんに近づく。


「はじめまして、私は妖精族のリタと申します」


「え、あ・・・・・・これも何かの・・・・・・小型ロボットぉ?」


「ロボットという種族はわかりませんが、違いますよ。私は妖精族です。コウヤのように魔法も使えますよ」


リタはそう言うと、自分の身体よりも数倍大きい水の塊を出す。


「どうぞ、私の魔法で作った水の塊を触れてみて下さい」


「え、ええ」


姉さんはそう言うと恐る恐るリタの作った水の塊に触れる。


「・・・・・・本物の水だ。フォログラフィックじゃない」


「私ほどの魔術に長けていれば、自由自在に操ることも出来ます。こんな風に」


空中に出している水を四角い形にしたり、紐状にさせたりして見せる。


「え、ええ!? 嘘ぉっ! 本当に魔法なの?」


「ええ、これで信じてくれましたか?」


「もうこんなの見たら、信じるしかないわ」


よかったぁ〜。リタのおかげようやく信じて貰えたよ。


「洸夜さん。アナタも頑張れば今やってたことが出来るわ」


「え、ホント!?」


「ええ、最もアナタの修行次第だけど」


リタはそう言うと、辺りをキョロキョロと見回す。


「コウヤさんは本当に別世界の人間だったんですね」


「あ、もしかして疑ってた?」


「いいえ、疑っていたと言うよりも半信半疑でした。ちょっと興味があるので、見て回ってもいい?」


「見ても構わないけど、外に出るのはダメ。あとは物に勝ってに触れないで欲しい。もし興味ある物があったら呼んでくれ」


「わかったわ」


リタはそう言うと、ウキウキさせながらリビングを飛び周る。


「じゃあさっき言っていたことって本当なの」


「異世界に留学すること?」


「ええ」


「紛れもない事実だからな」


「ズルイ!?」


いきなり身を乗り出して言うものだから、びっくりして身体をのけ反らせてしまった。


「私もその世界に行ってみたいから連れてって!」


「ダメですよぉ〜」


「何で?」


「洸夜さんの転移は唱えて場所。つまり転移を使用した場所しか行き来出来ませんからぁ〜。

それに今転移してしまうと他の方と鉢合わせしてしまいますので、今回は諦めて下さいねぇ〜」


「そ、そんなっ!?」


ティアラ様の話を聞いた姉さんはテーブルの上にうつ伏せになり、ガックリしていた。

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