第3話 自分のスキルについて

手のひらに乗っている結晶をまじまじと見て、何かイメージと違うと思ってしまう。


「これが魔力ですか?」


「いや、それは違うの。魔力の結晶。指図め、魔水晶と呼ぶべきかのう」


「魔力の結晶?」


「そうじゃ。よりにもよってまぁ、ユニークスキルを使ってしまうとはのう」


「ユニークスキル?」


ユニークスキル。名前を聞く限りだと、特別な能力なのは間違いなさそう。


「スゴイですねぇ〜。無意識とはいえですけど、ユニークスキルを発動させるなんてぇ〜。やっぱり私が見込んだ通りの方でしたねぇ〜」


「あの・・・・・・すみませんが、そのユニークスキルって一体何なんですか?」


「ユニークスキルとはのぉ、その人しか使えないスキルのことを言うんじゃよ」


「しかも、そのユニークスキルは、特定の種類以外は受け継がれることはありませんよぉ〜。洸夜さんのスキルの名前は、[結晶化]ですねぇ〜」


結晶化。これが俺しか使えない魔法。だけど使えなさそうな気がする。


「それで結晶化というスキルは至ってシンプル、自身の持つ魔力を結晶にするだけの能力ですよぉ〜」


「へぇ〜、そうなんですか〜・・・・・・あれ? ひょっとして俺、魔力の塊を出そうとしても、出せない状態じゃあ」


「いんや、普通に魔力の塊を出せるぞ。また同じようにイメージして、魔力の塊を作ってみるのじゃ。今度は1人での」


「あ、はい」


少々不安になりながらも目を瞑り、手のひらに魔力の塊が乗っかっているイメージをした。すると、手のひらが暖かく感じるので、恐る恐る目を開けると野球ボールぐらいの大きさの光の球が手のひらに浮いていた。


「成功じゃな」


「これが、魔力なんですね」


「そうじゃ、この魔力に光属性を纏わせれば、光魔法[ライト]になり、火属を纏わせれば[ファイアボール]になるのじゃ」


あ、そうなんだ。じゃあゲーム序盤で使える魔法は誰にでも使える感じなのかな? ってあれ? 消えちゃった。


「でも、火、水、土、風、雷、風、それに光と闇。それぞれの属性に見合った適正がないと使えないんですよねぇ〜」


「そうじゃなぁ〜、確か向こうの世界では、適正属性が1種類か2種類持って産まれてくる者がザラで、頑張れば2種類まで属性を覚えられるんじゃ。確か、そちらの世界では稀に3種類ある者も存在するのじゃろう?」


「ええ、4種類の者になると伝説扱いになります。もちろん、その4種類を持った方は数は少ないのですが、いますよ。

それと3種類からの欠点は、均等ではないってところですねぇ〜」


均等ではない?


「どういうことですか? もしかして女神様がそういう設定したとかですか?」


「えっとぉ、私達がそう設定したせいではなく、本人の得意不得意の問題ですねぇ。ほら、こっちの世界でも陸上競技が得意な子がいれば、野球が得意な子がいる。

そして、野球も出来るけどサッカーの方が得意って言う子もいますよね。そんな感じですよぉ〜」


何だかわかるようで、わかりづらい説明だなぁ。つまり、適正があっても本人に苦手意識があったら伸びないってことなのかな?


「それよりも、向こうの人達に挨拶しに行かねばならぬからな」


「向こうの人達?」


「そうですねぇ〜。行きましょうかぁ〜」


そう言うと2人は椅子から立ち上がると、俺の腕を掴んで来た。


「今から会いに行く方は、アナタが3年間お世話になる人ですよぉ〜」


「お世話になる人ですか?」


「ええ、自己紹介の方は本人からして頂きましょうかぁ〜」


女神様がそう言った瞬間、目の前にあった壁やテーブルが一変して見知らぬ部屋に変わった。


「え? えっ!?」


「ほい、到着」


到着って、魔法陣みたいなのが足元に出て来て、そっから転移するのが定番じゃないの?


「魔法陣もなく転移出来るとは・・・・・・スゴイです。さすが女神ティアラ様」


「えっ!?」


声が聞こえた方向に顔を向けて見ると、そこにはモノクルを掛けた女性がいた。


「あの方がここ、ディスペル魔法学園の理事長を勤めているアニス・キオナ・リベルト ですよぉ〜」


「改めてまして、私がここの理事長を務めてさして貰っている アニス・キオナ・リベルト だ」


「あ、はじめまして。海山 洸夜 です」


頭を下げてお辞儀をすると、クスクスッと笑い声が聞こえて来た。


「キミも災難だったねぇ。まさかキミが通っていた校長が下らんことを考えて、冤罪を受けるとはね」


「何でそのことを知ってるんですか?」


「知ってるも何も、ティアラ様を通して見てたから、大体の事情は把握している」


「そうですか」


そういうことなら、説明は不要ってあれ?


「そう言えば、理事長と普通に話しているんですが、この世界は日本語が標準なんですか?」


「ああ、そうじゃった。読み書きの方は問題無く出来るようにしているのを言い忘れていた」


「そうですねぇ〜。この世界の知識までは与えてないので、自分で学んでいって下さいねぇ〜。それともう1人、アナタの生活面でサポートして頂く方を紹介しますよぉ〜」


生活面でサポートしてくれる人?


「リタちゃ〜ん、出て来て下さぁ〜い!」


『はぁ〜い!』


何処からか声が聞こえて来たと思ったら、光る魔法陣の中からスゥーっと、背中から蝶々のような羽の生えた小さな少女が潜り抜けて来た。


「はじめまして、洸夜さん。アナタのサポートを務めさせて頂く妖精のリタです」


「あ、はい。はじめまして。こちらこそよろしく」


流石ファンタジー世界、妖精まで存在しているとは。


「まぁ見てわかる通り、彼女は妖精じゃ。生活面、魔法面、さらにこの世界の常識などのサポートの担当じゃ。仲良くするのじゃよ」


「あ、はい」


目の前にいる妖精をまじまじと見つめていると、何故か女神様の後ろに隠れてしまった。


「そんなに見つめられると、恥ずかしくなる! 私に気があるの?」


「あ、ゴメン。そんなつもりじゃ・・・・・・」


物珍しい目でリタを見つめていたら、勘違いさせてしまったようだ。


「まぁまぁリタさん、落ち着いて下さいよぉ〜。彼と一緒に行動していれば、見つめられていた理由がわかりますからねぇ〜」


「そう?」


「そうですよぉ〜。とりあえず契約の方をして下さぁ〜い」


「・・・・・・わかりました。ティアラ様がそう仰るのですから、この人を信じます」


彼女そう言うと、俺の目の前に来て手をかざす。するとその手から魔法陣らしきものが出て来た。


「この魔法陣に触れて魔力を注ぎ込んで。そうすれば私との契約が出来るから」


「わかりました」


俺は言われるがまま魔法陣に触れて魔力を注ぐと、魔法陣光が光だした。


「もう手を離しても、大丈夫ですよぉ〜」


「あ、はい」


魔法陣から手を離すと、スッと消えていってしまった。


「契約完了! これでいつでもアナタの元へ転移出来るようになった。よろしくね、海山 洸夜くん」


「あ、うん。よろしく」


転移。いつでも行ける。どういうこと?


「まぁ顔合わせも済んだことじゃから、そろそろ帰るかのう」


「えっ!? もう帰るんですか? 今後の詳細とか、入学手続きとかは?」


「入学手続きについては、理事長である私が全部やっておく。あ、そうそう。入学前に魔法や座学について勉強をしておかないといけないから、明日の朝8時30分に来て欲しい」


魔法や座学についての勉強か、そうだよな。この世界の常識なんて全くわからないし、魔法に関しては今日初めて使ったからなぁ〜。このまま入学しても怪しまれるだけだよな。


「一応聞きますが、勉強する期間は何ヶ月ぐらいですか?」


「2ヶ月ちょっと先に入学式がある。そこにキミを入れるからぁ〜・・・・・・2ヶ月間の勉強をすることになるなぁ」


2ヶ月で人並みに魔法を使えるようになる上に、常識を覚えなきゃいけないのか・・・・・・ハードル高いなぁ〜。


ハァ〜・・・・・・っとため息を吐いていると、視界にリタが入って来た。


「そんな顔をしちゃダメだって。まだ始まっていないんだから!」


「そ、その通りか」


怒った顔させながら言うので、たじろいでしまった。


「そろそろ本当にお暇せんと行かんからな、ほれ転移の練習じゃ。自宅をイメージしつつ[テレポート]と言ってみなさい。

そうすれば自宅に帰れるぞ」


「はい」


神様に言われた通り、目を瞑り頭の中で自宅をイメージする。


「テレポート」


身体中で何かが抜ける感覚した。そして目を開けると目の前には見知った光景、そう自宅が目の前に広がっていた。

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