亡霊には勝てない

凜逢

亡霊には勝てない

prologue.薬指

 彼の燻らす煙草の煙が、その顔を隠してしまう。俺は、それがなんだか、怖くて、酷く、空恐ろしくて。せめて、俺もその煙の中に入れて欲しくて。一口下さい、とせがむように言えば、生意気だ、と笑われてしまった。

 そんな夜だった。彼の左手の薬指では、いつものように指輪が輝いていた。

 泣きたいのはきっと彼の方なのに、泣きそうなのは俺の方だった。

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