第7話

今日は一樹と二人で飲み会。

場所は渋谷。


会社から数十分電車に揺られて大都会東京にやってきた。





「じゃあ絢、またあとでな。」


中庭にある喫煙所から一樹が絢に声を掛ける。


絢は、中庭の池にいるカモの様子を見るために

ここに足を運んだ時のことだ。



「はい、わかりました。」



そっと返事をして、絢は中庭をあとにした。





キーンコーンカーンコーーーン





終業時刻のチャイムが鳴った。


「さあ、帰るぞ。」

「早く行かなきゃ。」



絢は今日、久々の定時上がり。



会社の人にバレないよう、まず先に絢が着替え、渋谷に向かう。

二人は、時間差をつけて会社を出ることにした。


事前の二人だけの入念な連絡のやり取りがあったことは、

ここで語らなくてもお分かりいただけるであろう。



絢は、今日がとっても楽しみで

今日一日中心がふわふわしていて

足に地面がついていないような気分で一日過ごした。






待ち合わせ場所はハチ公前。






恥ずかしながら絢は関東圏で生まれ関東圏で育ったのにも関わらず、

今日が初渋谷だった。




学生の時の遊ぶときは、もっぱら新宿。

そのほかの娯楽はなく、毎日勉強漬けの学生生活を送っていた。






「ハチ公前ってどこだろう...」




スマホで検索しながら、

とりあえずハチ公前出口を探し、ハチ公像を探した。




絢は地図を読むのがとても苦手で、ハチ公前にたどり着くのに苦労した。



絢は、地図が示すハチ公像前に到着した。

だが、絢は少し困惑した表情を見せている。






それはなぜか?




ハチ公像前の群がる人の多さに圧倒しているからだ。

人が多すぎて、肝心のハチ公像が全然見えない。






「これじゃあまともに待ち合わせなんかできなくない...?」








そう思いながら、

ハチ公像前で一10分程度の時間が過ぎた。



待っているだけではとっても暇なので、

絢は音楽を聴きながら、Twitterにツイートをして時間を潰していた。


「渋谷なう★ これからディナー★」

「ハチ公像前人多すぎw わろたw」


ツイート文と一緒にハチ公像前の写真も添えて投稿した。



ヴーヴー…



ツイートを見た友達からコメントが来た。

「絢、今渋谷なの?! 珍しいね!

 やっぱり渋谷葉いつでも混んでるよねー。

 人の波に流されないように、ハチ公のしっぽにでもつかまっておきなw」


友達のコメントは面白く、絢はクスッと笑みをこぼした。









ヴーヴー...


「また、誰かからコメントが来たのかな?」



あやはスマホを確認した。





連絡は一樹から。


「あっ、一樹…」

絢は、心が弾んだ。


内容をすぐ確認した。







「ごめん、ちょっと遅れる」




「集合は直接食事するとこでいい?」








「あ、全然大丈夫!」


「おっけー」




絢は返信をした。



絢が「大丈夫」と返信をすると、

一樹からお店の地図と住所の情報が送られてきた。



大丈夫と返信をしたのはいいものの、

同時に…。という感情に押しつぶされそうになった。





それはそう、絢は初渋谷。


場所もわかんない。

土地勘がない。


おまけにが地図を読むのが苦手。



「…さあどうする…?」






いろいろ考えたが、とりあえずスマホで地図検索。




音声ナビも必要と考えた絢は、

おもむろに聞いていた音楽の再生を止め、音声ナビに切り替えた。



「やばい、ちゃんとたどり着けるのかな…」



不安な気持ちのまま、絢は一樹との待ち合わせ場所の

レストランに向けて歩きだした。

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