盲目が生む平和3

           オルギン・ワインダー君へ


 まず、もし君が私の話を楽しみにしていたのなら最近忙しく話を聞かせてあげられなかったことを謝ろう。私自身も君はとても良い反応をしてくれるから話を聞かせてあげるのはとても楽しくいよ。だからあの場所へ行けてないことを残念に思っている。そして今回この手紙を書いたのは私に心残りがあったからだ。前回君にされた質問だ。覚えているかね?。あの時、私は質問に対して何とも曖昧な返事をしてしまった。ちゃんと私の考えを君に伝えてあげるべきだったと今は思っている。それが心残りだった。だからこの手紙であの質問の返事を書こうと思う。

 もし学校の子たち全員が盲目だったらという事だったが、もしそうだとしたら君は苦しい思いをしなかったかもしれない。もし世界中の人々が盲目だとしたら、どんな外見のコンプレックスを抱いていようが互いの見た目なんて気にせず少しは生きやすい世の中だったかもしれない。そういう世界だったとしたら今はない幸せがあったのかもしれない。だが、それは逆もまた然りだ。盲目の世界には無い幸せがこの世界にはある。そして他人の見た目を見ることが出来るこの世界にも君の望む関係を築ける人は沢山いる。この世界は君が思っているほど地獄じゃない。それは知ってほしいと思っている。

 なぜ私がカナダの話から出会った人々の話をするようになったか分かるかい?もっと世界は広いと、君はまだ約70億人の内のほんの一部の人間にとしか会っていないということを知ってほしかったからだ。まだほんの一握りの人間と接しただけで世界が生きずらいと感じるのは早いと思う。だから君に世界には色んな人がいるということを分かってほしかった。だが、話を聞くだけでは実感などなく物語を聞いているのと変わらぬな。そう感じたよ。だから君には実際に世界へ羽ばたき色んな人と接しこの世界の幸せを味わってほしいと思っている。君ならば上手くやれるだろう。これは私が君という人間と接してみて実際に感じたことだ。君ならば上手くやれる。もちろん会う者全ての人間と上手くいくということはないだろう。トラブルも起こりうるかもしれん。そこは覚悟しておいた方がいい。だがそれ以上に良い出会いがあるだろう。それと君は顔が普通ではないから目の見える者は皆、自分を避け傷つけ嫌うと思っているようだがそんなことは決してない。これまで辛い思いをしてきたことを考えればそう考えることも理解できるが、これは断言できる。そんなことはない。その証拠として君にひとつ謝らなければならないことがある。それは、私が実は盲目ではないということだ。嘘をついて申し訳ない。これに関しては大した意味はない。言うなれば恥隠しとでもいうのだろうか。まぁ機会があればこの話もしよう。さて、私は盲目ではなく見えていたわけだ。もちろん君の顔もよく見えていた。だが君の考えるように私は君へ罵詈雑言を浴びせただろうか?変なものを見るような目を向けただろうか?いや。しなかった。そのようなことを考えたことも無かった。ただ良い笑顔で聞くのが上手い少年だと、そう思っただけだ。いいかい。世界中の人々は君が思っているほど敵ではないし、君は君が思っている以上に素敵な人間だ。私との出会いが欠片でも君の自信に繋がることを願っている。

 随分と長々と書いてしまった。読むのが疲れただろうすまない。ここら辺で終わりにするとしよう。それと同封しているのはこれから新たな世界を足を踏み入れる君への応援と素晴らしい時間を過ごさせてもらったせめてもの感謝の気持ちだ。受け取ってくれ。では、また君に会えるのを楽しみにしている。

                   

                               R

                                   』



ここで終わりかと思ったが書き加えがあった。



『 p.s. 

この部分は君のご両親にも目を通してほしい。まず、突然このような贈り物をしてすまない。見知らぬ男からの贈り物だ。快く受け取れないかもしれない。もしそうなら、遠慮せず寄付するなり破り捨てるなりしてくれ。私に返すということは恐らく無理だろう。だから、要らぬというのならどこかに寄付してほしい。それともしオルギン君がもう一度学校へ行きたいと願うのならば少し遠いがアウエルニースという学校へ一度話を聞きに行くといい。あそこの校長は私の古い友人でね。きっと助けになってくれるはずだ。話は通しておくからもし行くのなら連絡を取るといい』



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