必殺! 使役人!

あずびー

第1話 恨みはらします

 オフィス街の一室。深夜だというのに男が床でへたり込んでいる。

残業で仕事をしているという感じではない。オフィスは暗く電気が点いていないからだ。

「やめてくれ! 俺が悪かった」

非常灯だけが灯る部屋で、男は見えない何かに怯えているようだ。

「ゆ、ゆるしてくれ、このとおりだ」

男がオフィスの床に手を付き土下座をした。

      バキ!

床についた手が、熱く感じられた。次に痛みが奔る。

      ギャーーーーーーーーーー!!!!

後ろにのけぞった男の視界に、床に転がる手が見えた。

同時に自分の腕も視界に入る。腕の先、手の平がない!

      ウワァーーーーーー!!!!

男が血を止めようと、腕をかばう。

      ゴキ!

男の腕が床に落ちた。

      ボキ! ボコ!

続けて男の首が、床の上で転がった。

「気は済んだ」

血臭が広がるオフィスで、女の声が響いた。

女の目には、大きな鉈を持つ老人の姿が見えている。

「あなたの家、土地を奪い、自殺に追いやった男の末路ですか」

女は床に転がる首を見て、目を細めた。

「これであなたは、私の式です。暫くは、私の副業しごとを手伝ってもらいますからね」

女が紙片を老人にかざした。老人の身体が揺れはじめ、砂のように紙片に吸い込まれ消えていく。女も紙片をしまうと、闇の中に紛れるように姿を消した。

非常灯も消えたオフィスに、闇と血臭が拡がっていった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る