駅のブレナン
丸 子
第1話
えきのブレナン
ここは とあるまちの えき
でんしゃが たくさん うごいています
ひとも たくさん うごいています
とっきゅうでんしゃに のろうとしている ひとたちがいます
でんしゃには「じゆうせき」「していせき」「ぐりーんしゃ」という 3しゅるいの せきが あります
でんしゃの しゃりょうの そとがわに せきのしゅるいが かいてあるので、のるひとは のりたいせきの とびらの ちかくに ならびます
じゆうせき には ひとびとの ながい れつが できています
サラリーマン おじいさん おばちゃん がくせいさん かぞく
いろんな じょうきゃくが ならんでいます
じゆうせきは はやいものがち
すわったじゅんに せきが なくなっていきます
みんな じぶんの すわりたい せきのために はやくから ならびます
していせき には みじかい れつ
きっぷを かうときに せきを よやくするので のるときに ならばなくても だいじょうぶ
していせきの ひとびとは はたらいているひとがおおいのか スーツをきて しごとのはなしを しています
しんぶんを よんでいる ひともいます
ぐりーんしゃ は とくべつな せき
いすが すこしおおきめで ふかふかで まえのせき とのあいだが ほかの しゃりょうに くらべて ひろめに あいています
とっきゅうでんしゃがくる ホームに ひとりの おんなのこが やってきました
せいふくをきています
みたかんじ ひとりたびは はじめてのようです
きんちょうしているのか かたが ぎゅっと あがっています
ちゅうがくせい くらいでしょうか
おんなのこは なにやら ぶつぶつ いいながら じゆうせきの れつに ちかづいてきます
れつの さいごは スーツをきた おとこのひと
ふたつに おりまげた ざっしを わきに はさんで、でんわで なにやら はなしています
むずかしいかおを しています
おんなのこは しずかに そのおとこのひとに ちかづき、うしろに ならびました
おんなのこが ならんだ すぐあとに、おとこのひとが ふたりに おんなのひとが ひとりの 3にんぐみが きました
おおきな こえで はなしています
れつが きゅうに にぎやかに なりました
「じゆうせき」しゃりょうを のぞきこんでいます
「あ、まだ はいれないのね」
「よかった」
「これなら すわれそうだね」
「わたし のどが かわいたわ」
「ぼくは おなかが すいたな」
「でんしゃの なかで たべるもの かってくる?」
「いや、せきを とってから かいに いこう」
「じゃあ、とりあえず ならびましょう」
おんなのこの うしろに ならびました
おんなのこは 3にんぐみの まねをして しゃりょうの なかを のぞいてみました
そうじをされて きれいになった ざせきが みえます
つうろを はさんで さゆうに ふたつずつ ざせきが ならんでいます
どの ざせきも すすむ ほうこうを むいています
なかを のぞくのを やめると じぶんの すがたが まどに うつっているのが みえました
「どのへんに すわろうかな」
アナウンスが ながれてきました
アナウンスは はやくちだし まわりの音が大きいので よくきこえません
おんなのこは いっしょうけんめい みみをすまして アナウンスを ききます
とびらが いっせいに ひらきました
ひとびとが われさきにと でんしゃのなかに はいっていきます
おんなのこも すいこまれるように なかに はいっていきました
しゃりょうにはいると もう あちこちに すわっているひとが いました
でも まだまだ せきは たくさんあります
おんなのこが すきなせきを えらぼうと あたりを みまわしましたが、ひとが なみのように おしよせてきて きがつくと ひとつのせきに すわっていました
「あ、ここかぁ。
まぁ、いっか」
まえよりの せき みぎがわです
とりあえず つうろがわに すわりました
おんなのこは しばらく すわったままで、ひとの うごきが とまるのを まちました
ざせきを よく かんさつすると、まえの せきの せもたれに テーブルが とりつけて あります
そのしたには あみがあり なかに カタログのような ものが はさんであります
みぎがわには のみものを いれる ホルダーが たたんで あります
ひっぱると ペットボトルが はいる くらいの おおきさの ホルダーが できあがりました
テーブルも だしてみます
ガシャポンみたいな つまみがあり それを まわすと テーブルが ガタンと おりてきました
テーブルのひょうめんには へこみがあり、そこに のみものを おくのだと わかります
まどがわの せきには まどのへりに へこみがあり、そこにも なにか おけそうです
おんなのこは ひととおり さわったり ためしたりして、かいてきな でんしゃのたびが できそうだと かんしんしました
いすの ひじかけの うちがわには ボタンがついています
ボタンのところには すうじが かいてあり、えが かいてありました
ボタンをおしても なにも おこりません
ボタンをおしたまま あしを つっぱると リクライニングになることを はっけんしました
これは べんりです
「でんしゃが うごきだしたら、まずは これを やってみよう」
おんなのこは そう きめました
だいたいのひとが すわったのをみて、となりのせきに じぶんの にもつを おきました
すると うしろのほうから
「やった。すわれたね」
「かいにいこうよ」
「うん、そうしよう」
さっきの3にんぐみの おおきなこえが きこえました
そのこえに はっとして、おんなのこも だいじな にもつだけもって せきを たちました
じぶんがすわっていた せきには きていたカーディガンをおきます
そのとなりには せおっていたリュック
このなかには ほんがはいっているので、まんがいち ぬすまれても へいきです
じぶんの せきを ちらちら みながら でんしゃを おります
そとから もういちど じぶんの せきを みて かくにんしました
にもつも カーディガンも ちゃんと あります
しゃりょうは 3ごうしゃ、せきは2のBです
せきの ばしょを たしかめて、ばいてんへ むかいました
ちいさな ばいてんにも みじかい れつが できていました
「また ならぶのかぁ」
おんなのこは つかれていたので なにも かわずに せきに もどろうとしましたが、おもったよりも れつが はやく すすんでいます
「これなら あんまり ならばなくても かえるかも」
そう つぶやいて れつから はなれずに まつことにしました
おみせの いりぐちを みていると ひとが つぎからつぎへと でたりはいったりしています
そのようすが まるで からくりとけい のようで おかしくて、おんなのこは おもわず わらってしまいました
かいものをすませて、じぶんのせきに もどった おんなのこは かったばかりの しおキャラメルを かいものぶくろから だし、ひとつぶ くちのなかに ほうりこみました
だいすきな しおキャラメル
いままでの つかれ と きんちょうが すぅーっと とけていくのが わかります
チケットを ポケットから だして しゃしょうさんが きても すぐに だせるように まどのところに おいておきます
いっしょに ミルクティーも おいて おきます
ついでに よみかけの ほんも
「たのしい たびに なりそう」
はじめての ひとりたび
しかも でんしゃにのって とおくまで いきます
うまれてはじめての ぼうけんです
しぜんと えがおに なってきました
いすが リクライニングになっているので うしろのせきに だれもすわっていないのを みてから、すこしだけ たおして ゆったりと おちつき まどのそとをみると、さっきの3にんぐみが みえました
「まだ かいもの してるんだ」
3にんのてには おおきな かいものぶくろが さがっていて とても おもそうなのに、まだ かいたりないようで ホームの あちらこちらを いそがしく あるきまわっています
まどごしに 3にんの こえも きこえます
どこにいても すぐにわかる3にんぐみ
とっても なかがよさそうです
はっしゃのアナウンスと はっしゃをしらせる ベルがなり、ホームが あわただしくなりました
さぁ、いよいよ しゅっぱつです
とびらが しまり、でんしゃが うごきだしました
ホームには てをふっている ひとも います
さっきの3にんぐみが せきについて、じぶんたちの いすを まわして むかいあわせに しているのが みえました
「へぇ、あんなことも できるんだ」
なにげなく まどのそとに めをもどすと、じどうはんばいきの よこにある すいそうが おんなのこの めに はいりました
かいものを していたときは きづかなかった ばしょです
まどに りょうてを ついて、かおを まどに ちかづけて、はなが つぶれるほど まどに はりついて すいそうを よく みてみました
なかに きんぎょが いました
まんまるな あかい きんぎょ です
すいそうの なかには いしで できた いえや みずくさが ゆれているのが みえました
とうめいな すいそうから、みずも きれいで ていれが いきとどいているのが わかります
とても すみごこちの よさそうな すいそうです
きんぎょは 2〜3ひき いるようですが、なかでも、まんまるなきんぎょが めだっています
「ぜんぜん きづかなかった」
すいそうを とおりこす しゅんかん、すいそうの よこに えほんが おいてあるのが みえました
『きんぎょのブレナン』
えほんの ひょうしには そう かいてありました
いちばん めだっていた まんまるな きんぎょに そっくりな きんぎょ の えが かいてあります
「あの きんぎょ、ブレナンっていうんだ・・・」
かおじゅうが かがやいて とびっきりの えがおに なった おんなのこは りょこうから かえって まず まっさきにする たのしみを みつけたのでした
おしまい
駅のブレナン 丸 子 @mal-co
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