ポアンカレ号は宇宙を廻る

ヒトデマン

地球から地球へ

「さあたった今!永い永い宇宙への旅路に、ポアンカレ号は飛び出しました!」


 衛星軌道上に作られたポアンカレ号は、反物質エンジンを点火させると静かに動きだす。ポアンカレ号はダイダロス型ロケットと呼ばれるもので、さながらぶどうの房のような形をしている。


 ポアンカレ号の後方から地球にロープが伸びていた。超技術で作られた決して千切れないロープである。


 ポアンカレ号は地球より出でて地球へと帰る。

 どこかの星へ行くわけではない。積んであるのは大量の反物質燃料と、一人分の乗組員の居住スペースのみである。調査用の機材などは一切積んでいない。

 ポアンカレ号の目的は、ただただこの宇宙を散歩することなのだ。


「ポアンカレ号の速度が光速の99.999999%に到達するまで、ポアンカレ号内時間で残り157日17時間36分5秒。」


 コンピューターがそのようにアナウンスを発する。

 たった一人の乗組員、グリゴリーはそのアナウンスを聞くと大きく伸びをして呟く。

「さて、永い永いお散歩の始まりだ。」

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