キーボードブルース
星野 驟雨
声明
薄汚く生きている私は、輝かしい人々に囲まれている。
そんな彼らの日常に幸多からんことを願う。
特に書きたいこともないのに、私が筆を持つ理由は単純だ。
それは、どこかしらで救われたいからだ。
決して手に入らない望みだからだ。
夕焼けの美しさを知っているだろうか。
そして朝焼けも同じ色をしていると知っているだろうか。
私を取り囲む人々は、その空に似ている。
夕焼け空を美しいと捉える人もいれば、寂しいと捉える人もいる。
ただ一つ明確なのは、それは燦燦と輝いていて、いたく眩しいということだ。
私は自分の限界を知らず身体を壊した。双極性障害というらしい。
思い返せば、私はその輝いていた人たちに追いつこうとしたのかもしれない。
飛び方を知らなければ、空は飛べないのに。
現実はそんなものだった。
何かすごい人になれるかもしれないという夢を応援された小学生時代。
私を底なしに信じ導いてくれた先生を思い出す中学生時代。
やればやるほど力の伸びを感じた高校生時代。
私が自分の力を知れば知るほど、夢は遠く彼方へと飛び去って行った。
それでも私は飛ぼうとした。
現実など見えないと言わんばかりに、自分の力をむやみに信じて。
もちろん、飛べなかった。だから私はここにいる。
墜ちた鳥は死ぬしかない――。だが、私は死ねなかった。
正直に告白すれば、まだ夢を見ていたかった。
私は夢を見ている。
目を閉じても瞼裏を染め上げてくれる夕日のような夢を見ている。
私の目を焼いてしまうほどの、朝日のような夢を見ている。
そして、この夢が終わることがないように言葉にするのだ。
救われたい気持ちを、叶わない望みを、言葉にするのだ。
どれほど恥ずかしくても、私は私を信じてやりたい。
嫌われることは怖いが、自分に嘘はつきたくない。
含蓄などなくていい。クサくても子供でもいい。
他人を笑うよりも、垢ぬけず真っ直ぐにいる方がいい。
これはそんなちっぽけで弱い私の、精いっぱいの声明文である。
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