わたしは婚約を破棄する!
teardrop.
このタイミングで婚約破棄をする・・・だと?!
「ジュリエット、悪いな。わたしは婚約を破棄する!」
「な、なんですって?!なぜこのような大事な時に・・・!」
王城の一室で、熾烈な争いが繰り広げられていた。第1王子であり、王位継承権第1位のロミオと、その婚約者であり侯爵家の二女、ジュリエットであった。周りには王国の行く末を決めるに相応しい大貴族の当主が勢ぞろいしていた。そう。まさにその王国の政治、軍事にまつわる話し合いの真っ最中であった。
「ああ、そうだ。驚いたかい、ジュリエット。だがそれだけではない」
「・・・ハッ、まさか?!」
「そうだ。ここで異世界人を召喚する。異世界人の力により、我が軍勢は実に倍の攻撃力を誇ることになるはずだ!」
「ロミオ様・・・なんということを」
まさかの王子の一手に、家臣たちもざわつき始める。
「異世界人とな。いやしかし、いま異世界人を召喚しても何の効果も得られずに終わる可能性もある」
「左様。異世界人と言えども能力は様々。なぜ殿下は攻撃力が上がると確信されておられるのか」
「しかしその効果が確定するのであれば勝利は確実のものとなる。いったいどのようになさるおつもりなのか」
策を疑問視する臣下が多数いる中で、ロミオは不敵に笑みを浮かべていた。
「ふっ!お前たちはまだまだ甘いな。何のために婚約を破棄したと思っている。すべてはこの時のため!」
「マジックカード発動!悪役令嬢の誤算!」
ロミオは温存していた最後の切り札を切った。マジックカード『悪役令嬢の誤算』、このカードは通常、女異世界人をランダム召喚する効果を持つ。だが婚約カードが墓地にある場合、そのカードを勝負から排除する代わりに自身のデッキの中から最大の攻撃力を持つ女異世界人を1枚、場に召喚することが出来るのだ。
そして場に召喚されたのは『異世界人:マサコ』であった。場に出ている自分のほかのカードの攻撃力を2倍にすることの出来るレジェンドレアカードだ。
「そ、そんな・・・」
ジュリエットは崩れ落ちた。もはやロミオの攻撃を止めることはかなわないと悟ったのだろう。そしてジュリエットのライフは尽きた。
「わたしの勝ちだな!いやー、誤算が初手で来た時点でこの勝ち方を狙っていたんだが、どうにも婚約が出てこなくてなあ」
「ええ、まさかこのような大逆転をされるとは思いませんでしたわ。やはりお強いのですね、ロミオ様」
ロミオとジュリエットは、感想戦をしながら談笑していた。
「だが、これで決まっただろう!わたしの推す農場プラント資金援助法はこれで満場一致で可決だな!!」
「ひどいですわ。わたくしの国営ふれあい農場建設案はまたしても没なのですね」
カードゲームでの勝敗は絶対である。国政の場でも変わりはないのだ。
わたしは婚約を破棄する! teardrop. @tearseyes13
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