ガーディアン・ゲーム
板垣浩一
1
そう遠くない未来、留まる事を知らない人口増加は人類を三つに分断してしまった。
最下層の人類は、「ラッシュ」と呼ばれ奴隷のように扱われていた。中層階級は「ミドル」と呼ばれている。ラッシュを思うままに支配するのは一握りの上層部の人類「キング」だ。
キング達はラッシュがこの世に生まれてから死の瞬間までの、全ての権利を握っていた。不幸にもラッシュに生まれてしまったなら、キング達の玩具として一生を過ごす事になる。ラッシュはキングの人口管理の下、生活していた。
山下勇輝はラッシュの男性だ。年齢は30歳。介護の仕事をして働いている。といっても、ラッシュの人間が任せられるのはいつも簡単な仕事だが。
最下層の人間として生まれてから今まで、何度となく差別にはあってきた。時には非人道的な扱いも受けた。だが、過去に折り合いをつけ、なんとか暮らしている。
今日の仕事も終わり、家路につく。
何気なく今までの人生を思い出す。
小学生の頃から最下層の人間として扱われてきた。中学ではいじめにもあった。担任の教師は知らぬふりだった。
帰り道、ビルの合間から見えるいつもと同じ夕暮れが眩しい。
家に着く。風呂の準備をする。
ラッシュの指定した仕事だが就職もできた。こうやって暮らしていくことにはもう慣れた。両親共に健在だが遠方で暮らしている。
今日の晩御飯はスーパーの安売りの惣菜だ。決して恵まれてはいないが、ラッシュでこれだけ食べれるのなら充分だろう。夕食にありつけないラッシュだっている。テレビをつけて、少しボーっとする。
小さい頃はいじめられてかえると祖母がよく「誰も恨んではいけないよ。いつか必ず勇輝が認められる日がくる。だからまた仲良くするんだよ」と頭を撫でてくれたのを思い出す。
そうこうしてるうちに、風呂の準備が出来たようだ。
さっそく湯船に浸かる。今日一日の疲れが抜けていく。何だか少し眠くなってきた。
勇輝は見たことがない部屋で眠っていた。目を覚まし、辺りを見渡すが、全方位白い壁に囲まれていた。正面の壁にはドアが付いている。また、壁の上側にはスピーカーも付いている。
入浴していたはずだが、服装も黒いツナギに変わっている。左手にはデジタルの腕時計が付けられていた。
「何でこんなとこに?」
ここがどこなのか、どうして自分はここに居るのか、現在自分が置かれた状況に関する全ての情報があまりにも少なかった。
ドアを開けてみようと近づいてみたが、厳重にカギが掛かっていて全然動かない。
「誰かいませんかぁ?」
声を上げるが状況は変わらなかった。自分の中で不安と恐怖が膨らんでくる。
ドアを叩いてみる。材質は何だろうか。びくともしない。
昨日は仕事から帰ってきて夕食の準備をし、いつも通り風呂に入ったのは覚えている。
「誰かぁ。ここはどこですかぁ?」
ドアは部屋を隔てる役目を果たして、相変わらず反応はない。
一度ドアから離れて、自分の持ち物を確認してみる。今着ている黒いツナギは勿論自分の物ではない。左手の時計もそうだ。
時計には三つのボタンが付いていた。その一つを押してみる。
腕時計の画面に心拍数やSPO2と数値が表示された。どうやら勇輝のものらしい。
何故こんな腕時計を付けられているのか。不安はますます大きくなる。
と、突然
「ガーディアン・ゲームへようこそ。こちらはゲームホスト、3133号。プレイヤーが目覚めたため、ルール説明を致します」
とスピーカーから抑揚のない女性の声が聞こえた。
「そこに誰か居るんですかぁ」
スピーカーに向かって叫んでみる。とりあえず自分は一人ではないらしい事に安堵する。
「ガーディアン・ゲームでは、無作為に選ばれたラッシュの方に、自分の命を賭けたゲームに挑戦してもらいます。このゲームに生き残りますと、ラッシュからキングへ住民階級が格上げされます。ゲーム指示はそれぞれの部屋のアナウンスに従って下さい。なお拒否権はありません。それでは第一の扉を解錠します。皆様のご健闘をお祈り致します」
こちらからの声には一度も答えてくれなかった。リボーン・ゲーム?聞いたことがない。
とりあえず鍵の解除されたドアに手をかける。ドアは素直に開いた。
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