アンテナショップ


 ソル星系内惑星貨物鉄道のマーキュリーステーション、そのフード・ショップのアンテナショップ。

 行ってみると、物資補給担当部長の景山響子さんが待っていました。


「まぁやりたいようにやってね、これから二十日間、貴女が臨時店長、店員はこのロボットさん、売り上げが黒字になれば、その1割をバイト代の上に、報奨金としてだすわ」


「宿泊場所は『レイルロード・キャビン・ウイッチ』――レイルロードの女性用簡易宿泊施設の名称、男性用はレイルロード・キャビン・ウィザード――だけど我慢してね、力仕事や警備はロボットさんがするわ」


「気楽にやってね、失敗しても貴女の責任じゃないわ」

「ただ悪いけど、バイト中の休みはないのよ」


「本当はロボット店員による二十四時間営業だけど、今回は朝の十時から十八時までの八時間勤務、休憩無し、トイレはショップ前に公衆トイレが作ってあるから、そこを使用してね」


「それからこれが制服、詳しいことは、このロボットさんに聞いてね、じゃあ頼んだわよ」


 と、言うだけ言って、忙しいのか、カロリスシティへ降りていきました。


「えっっと、ロボットさん、あなたをなんと呼べばいいのかしら?」

「私はレイルロードのトゥイーニー・オートマトン――汎用メイド自動人型機械の意味――の試作品、製造番号RTA001―00001です」


「じゃあ、私は貴女のことをトニと呼ぶ事に決めたわ、トニ、このショップの事を教えてくれない、どうなっているの」


 トニの説明によると、フード・ショップは『コッペハウス』と呼ばれ、レイルロード物資補給部直営チェーンの一つ。

 『ステーション・フルタイム施設計画』と呼ばれる、旅客サービス街区を、レイルロードの旅客鉄道の全ステーションに必ず設置する。

 その計画の中に置かれる、簡易イートインレストランの一つ。


 『ステーション・フルタイム施設計画』とは、旅客鉄道の中核ステーションにおいては、ホテルやレストランには困りませんが、標準小型ステーションと呼ばれる小型のステーション、それよりさらに小さい標準簡易ステーションなどには、レストランも宿泊施設もない場所が多いのです。


 ないというより、稼働していない予備ステーションが膨大にあります。

 予備ステーションといえど、シティとして稼働していないだけで、ステーションだけ、稼働している場所もあります。


 先頃、レイルロードの旅客サービスも扱うことになったレイルロード物資補給部、色々問題のあった簡易宿泊施設のリニューアルをメインに、『ステーション・フルタイム施設計画』を構想したのです。


 ネットワーク審議会、ミリタリーの三軍統合幕僚部、ハウスキーパー事務局と根回しをし、ヴィーナスさんの裁可を得て、予算を全面的に握る総務RCTと交渉し、かなり削られたのですが、何とか確保し実施することになったのです。


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