プロローグ

「あ……、手」


 手に血が付いているのに気付き、慌てて洗面所へ向かった。


 途中、足がもつれて二回ほど転びそうになる。


(消さなきゃ、全部。証拠になりそうなものは……残さないようにしなきゃ)


 あんな奴のために、人生を無駄にしたくはない。


 混乱し、気を失いそうな気分の中、これからやらなければならないことを思い浮かべた。


 時刻は、深夜の二時。うまくやれば人目につかずにすむ。


 コップに水を汲み、一口だけ喉に流し込む。


 それだけで、少し落ち着いた。

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