プロローグ

 声をかけると、男は首だけを無理矢理曲げてこちらを見上げてきた。


「わたしが憎い?」


「……うるせぇ、このクソ女っ!」


「でも、わたしはあなたに対してなにも思わない。明日には顔も忘れてるでしょうね。たくさんいるのよ、強盗犯って。そんな人達を、いちいちわたしは覚えていない。なんの得にもならないもの」


 男が、力任せに腕を振りほどこうともがく。


 でも、体勢が不利な上に抑え込んでいる人間は警察だ。女といえど、それなりの訓練は日々つんでいる。逃れられるはずがない。

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