第11話 これから

しばらく、歩き続け彼女も大分落ち着いてきた様だった。しかしまだ、指輪で母親との思い出を甦らせているのかうわの空で沈黙が続いている。

「なんかごめん。嫌な思いをさせて」

こんな時、もっと、優しい言葉をかけたいがなかなかいい言葉が見つからない。コミュニケーション能力の低さに嫌気がさす。

「いいんです。私の個人的なことですし、逆にちゃんと、聞いてくれて嬉しいです。昔のことなのに思い出して先に進めない感じがして。だから、今日あの場所で話を聞いてもらおう、かなって」


「そうなんだ。強いね、僕にそんなことできないよ」彼女を心から尊敬したい気分だ。


「そんなことないですよ。それに、先輩の面白い記憶も見えましたし。一発芸でド滑りしてましたね」

彼女を見ると笑いをこらえきれない様子だった。


……前言撤回だ!全く、尊敬できない!

「それは高校時代の黒歴史…なんで知ってるの!数日前の記憶しか見れないて言ってたのに」


「さっき、先輩に触った時、なぜか高校生時代までの記憶が見えました。

もしかしたら、私が心の内を見せて先輩との関係が深くなったからかもしれませんね。

なんか、先輩て人に心を内を開けてないて言うか、感情を表に出さない感じがしますし。

よかったら、お互いの事を知るために、次、会う時は先輩の思い出の場所に行きませんか?」

「別にいいけど…今のこと絶対に!バイト先で言いふらさいないでよ」

「さあ~どうですかね~加藤さん」

彼女は不適な笑みを浮かべてこちらを見ている。絶対に言いふらす気だ。まあ、いいか彼女も元気をとり戻したことだし。

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