第10話過去と向き合う
待ち合わせ場所に着くと、すでに彼女は到着していた。
すると「彼女が場所を変えて話しをしたい」と真剣な表情で話しかけてきたので思わず了解してしまった。
すると、「よかったです。直ぐに着くので」と言って歩き始めた。
歩いている間も血の気の引いた顔をして何も話そうとしなかった。彼女を見ていると流石に心配になってくる。
そして、着いた場所はあの日ランニング中に交通事故を起こしていた十字路だった。
彼女はまだ、血の気の引いた顔をしておりとても話せる状態じゃなさそうだ。
「大丈夫?さっきから辛そうにしてるから、別に話しずらいなら話さなくても大丈だよ」
「ごめんなさい。心配させてしまって…大丈夫です!話せます」
顔色からして大丈夫そうには見えなかったが彼女は話はじめた。
「私…この場所で中学生の頃に、交通事故でお母さんを亡くしてしまったのです。
相手の方が信号無視をして来て横から。乗ってた車は大破しました。私も乗って一緒に乗っていました。事故にあった直前、お母さんの手が私に触れたんです。
でも、過去の思い出は見ることが出来なかった…別のモノになってたんです。その感触が忘れられなくて…しばらく、何もしない日々が続きました。
あの日、先輩ランニング中に事故にあった車を見ましたよね。この場所で。
だから、思い出してしまったんです」
話している間、彼女はずっと下を見て僕の顔を見ようとしない。相当、辛いことであったことなのだろう。
そして、彼女の右手に結婚指輪を付けていること気づいた。
さらに、彼女は話しを続けた。
「この指輪は、お母さんが結婚してから、亡くなる直前まで身に付けていたモノなんです。
この能力を使って指輪の記憶をみることが出来れば、思い出をいつでも蘇えらせることができる。
思いが強ければモノにも思念の様なものが宿ると思うんです。
だから、モノの記憶を見ることができる様になるためにトレーニングを始めたんです」
「そうなんだ…ごめんかける言葉が見つからなくて。大変だったね」
「いいんです。なんか、暗い話になっちゃいましたね。ちゃんと、トレーニングしてきましたか?」
そして、流した涙を拭きとり彼女は僕に触れた。
「ちゃんと、やってるみたいですね。安心しました。」
この場所でそんなことがあったとは。
彼女にトラウマを思い出させないためにここから離れたほうがいいと考え「帰ろうか」といってその場を後にした。
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