ハリボテ
「あの…次の授業の家庭科室って何処でしたっけ?」
「もう!敬語で話さないでって言ったのに」
「一緒に行こ」
「すいません…」
頼れる姉さん神谷憐花。2階の教室から階段を下りカルガモの親子のように付いていく。
今日の授業は、マカロニグラタン作り。エプロン及び三角巾を装備し真剣な眼差しで先生の作業工程を観察。ホワイトソースっていうやろうを作れば、ほぼ完成なのか簡単じゃないか…ぶつぶつ独り言。
考えるは安し行うは難しだった。…助かった。姉さんが同じ班で本当に助かった。俺は最終行程のオーブントースターに具材の入った耐熱皿を入れ、15分ほど見守るという役。楽だ…。
上記の文章からも分かるように俺はポンコツである。全ての教科が平均を下回る実力なのだ。
「ふはふふ…姉さん…いや憐花さん、ありがとうございました」
グラタンを頬張りながら、隣の美少女に話しかける。
「モフくん私お料理が好きなんだ。今新しいレシピを練習してるの。今度味見しに来て」
「ん?モフ?あ俺?…はい」
あれですね。社交辞令ですね。はいはいはい知っていますよ。今度遊びに行くねみたいなやつでしょ?知ってます。知ってます。実際に、遊ぶ事なんてありませんけれどね。
初登校から一週が経っていた。
現在、俺と会話をしてくれるのは、憐花姉さんしかいなくなっていた。転校生という特殊能力はスーファミのマリオのスターが如くあっさり消え去ってしまった。
中間テストの結果社会科目以外は平均点を下回った、俺のスッカラカンの中身も露呈し今は、話掛けてくる連中もいなくなり…俺は謎の転校生から風景のモブに、ジョブチェンジした。
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