転校生の現実

「今日からこのクラスに転校して来た本藤君だ。みんな仲良くしてあげるように!」


 二年A組のパッチワークのスカートを履いた元気なおばさん担任のつまらないテンプレコピペ発言をしている間。


 俺は動揺していた。


 中学二年の転校なんて只の地獄。

人間関係が出来上がった閉鎖された空間に投げ込まれるのは、捕獲された宇宙人と同じだ。


 クラスの連中の視線が痛いスポットライトがガンガンに当たっていて、顔面の血が身体に勢いよく流れ。血の気が引いていくのが分かる元々色白の顔がキョンシーみたいになりかけた時。


「そうだな。神谷の隣が空いているな」


 こっち、こっちと手招きされている方に目線を送ると。


「!!」


 超絶美少女だった。

目が猫のように大きく、黒髪ポニーテールで眼鏡をかけている。眼鏡イコール陰キャラを覆す革命女子だった。



「初めまして私は、神谷 燐花と言います。宜しくね」


「あわわ、はい。よろしくお願いしますぅぅぅ…」

 空気が勢いよく抜けた風船のような間の抜けた返事をしてしまった。


「同級生なんだから、敬語じゃなくていいよ。憐花って呼んでね」


「憐花さん…」


 何も気の聞いた返事も出来ずいつものオウム返しになってしまい。


「顔が真っ白…大丈夫?」


「だ…大丈夫ですぅぅ…元々色白なので」


「顔が白過ぎてマロというあだ名がついたぐらいですぅぅ…」


 精一杯の返しをした。つかみはOK?


「マロw可愛ね♪」


(あんたの方が千倍可愛いよ)


「チークつける?」


「一応男なんで…つけない…で…」


 からかわれているのだろうが、嫌な気にはならなかった。クスクスっと彼女は笑った。超絶美人の笑顔はヤバい世界を革命する…。


 ――昼休みになると窓側左奥の俺の席には、人だかりになっていた。


「何処に住んでいたの?」


「世田谷区」


「親金持ちなの?」


「普通のサラリーマン」


「どうしてこんな下町に引っ越して来たの?」


「仕事の異動だから詳しくは知らない」


「部活やっていたの?」


「サッカー部だった」


「運動得意なの?」


「補欠だった」


 会話というよりは、尋問に近い。こっちサイドから話す暇がないのだから。


 クラスメイトからの事情聴取は続く…。






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