彗星から生まれた怪人

@rupan

第1話 怪人が生まれた日

  会社からの帰り道俺は酔いに酔っていた。今日は花の金曜日だというのに、上司から仕事を押し付けられ、なんとか仕事を終わらせた後、行きつけの居酒屋に行って自棄酒を呷ってきたからだ。


 冬の寒さが厳しいこの時期に酒を飲んで酔った体を冷やすのは不味いと思いつつも迎えてくれる家族も居ない冷え切った家に帰る気は起きなかった。


 「ああ、彼女でも欲しいなあ」


 思わず口から出たその言葉は冬の夜空に消えていった…。

 彼女居ない歴=年齢の俺には世にはこびるカップル共を羨むと同時に妬ましい。

 流れ星にでも願い事を言えば俺にも彼女が出来るのだろうか。

 そういえば今日は流星群が見られるらしい。

 俺の足取りは近くの公園へと向いていった。


 公園へとたどり着くと電灯が薄暗くチカチカと光っていた。

 昼間は子ども達や散歩好きな老人が遊んだりしている公園であるが冬の深夜にもなると流石に誰もいないようである。

 辺りを見回しながら公園の中にある小さな丘へと寝転がった。

 幸いな事に空気は澄んでいて夜空に星が綺麗に輝いていた。


 冬の冷たさが酒で火照った体を良い感じに冷ましてくれ、寝転がって見る星の美しさと合わさってこのまま寝てしまいそうだった。


 その時だった。幾つもの流れ星が夜空に流れていった。

 チャンスだ!そう思い、すぐさま体を起こし口を開いた。


 「彼女が欲しい!彼女が欲しい!彼女が欲しい!」


 言い切った。しかし、何も起こらなかった。当たり前だが少し期待してしまった自分がいる。

 再び大の字になって、目を瞑り寝転がった。

 久々に子どもの頃に戻ったような気分であんなことを言ってしまったが、なかなかに気分が良かった。


 今夜は良く眠れそうだ。

 

 そんな事を思い、そろそろ帰ろうかと目を開けたら、一筋の大きな流れ星が見えた。

 思わずそのままじっと見つめていると段々とこちらに近づいている気がした。

 やばいと思って逃げようとした時にはもう遅く、辺り一面に光が広がった。





 この日から各地に流れ星が落ち、怪人という存在が世に出始めた。

 世に言う『厄災の流星』が落ちてきた日となった。

 

 

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