咲かない花

手塩にかけて

その花を育てた

茎は高く伸び

葉は茂った

適度な水分と

快適な気温

眩しい日差し

何もかもが揃っていたはずだった


それでも咲かない花はある

そう気付いた時

もしかしたら

この植物の世話を

投げ出すという

そんな選択肢も

あったかもしれない


でもそんなことはできなかった

今までに

多くのものを注ぎ込んできた

今更

自分という花が

決して花を咲かせない

無能な植物だとは

思いたくなかった


いつか咲くだろう

そんな言い訳をして

まだ

この見込みのない植物を

世話し続けている

蕾の一つも

つけない

この生き物を

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