屍蝋

誰にも知られない

洞窟の奥で

その屍は

長い時を過ごしている


どこかの物語の中にある

死ぬことのない

永遠の屍


腐って

崩れて

土になって

どこかに帰ることを

拒絶されたのか

それとも

自らの意志で

拒絶したのか


今や

畏怖の対象でもある

その誰かは

終わることのない

しかし誰にも知られない

長い時間を

何かに費やしている


呪いか

祝福か


もし

どこかの誰かが

世界を救うとして

あなたはそれを前にして

なんと答えるのか


その永遠の

しかし不完全な

肉体のままで

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る