春への扉

クースケ

春への扉

彼女は

いつもより早起きして、まだ折り目がついている新品の

制服に着替えて鏡のまえにたつ。やっと、この日が来た。


受験という長い道のりだった。無謀な挑戦だった。

そうあの日、2年前本屋で手に取った1冊の本。

偏差値ビリのギャルが1年で~慶応大学に現役合格した話


題目を、見ただけで衝撃だった。

何にも、取り柄がない私でも変われる⁈

いつも、一桁台のテスト用紙を友人に見せて、私、バカだから~とお調子者でいた私でも…。

そんな、切ない期待を抱いてなけなしのお小遣いをかき集めて買った。


一気に読んだ。

でも、やっばり私じゃ無理。

分かってるから、塾なんて溝にすてるようなもんだって。


この本をたまたま見た弟が、後押ししてくれた。

優等生の弟、いつも見下されていると思ってたのに。


その日から、彼が家庭教師になった。

「出世払い(合格してから)でいいから」と、憎たらしくも本気で教えてくれた。


合格発表の日、家族みんなで泣きながら喜んだ。









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