15話 湖のほとり

 湖が見える。

あんまり目の良くない俺だけど、

これだけ大きいと、よく見える。


 良い眺め、快晴。

のぞかと一緒だと、いつも晴れてるな。

楽しい、相変わらず。


 歩き初めて、30分。

そこに、屋根がある休憩所で休む。


「はい、ジーノ」

水をくれる、のぞか。


「ありがとう」

 美味しい。

運動の後だから特に。


「家族連れいっぱいだね」

と言うのぞか。


家族か。


(のぞかの家族はどこに居るんだ?)

って聞きたかったけど。


まあ、のぞかのタイミングでいいや。


 そういえば、俺の声。

普通の人間なら、聞いたって(ワン)としか、

聞こえないだろうけど、

のぞかの場合、理解しそうだよな。


「昔、パパとママと来た時は楽しかったな」

と言うのぞか。


のぞかの両親の話。


「そうだよな」

俺は聞いている。


「パパったら、張り切っちゃって、凄く嬉しそうなんだもん」

と言うのぞか。


 のぞかは普通に俺と話してるけど、

犬と人間だから、

周りの人はどう思ってるのか。

まあ、俺は全然気にしないんだけど、


「ママも凄く楽しそうだった」


全部、過去形だな。


 そりゃ、事故とか言ってたから、

もしかしたら、居ないかもしれないけど。


「いこっ。ジーノ」


「そうだな、行こうぜ、のぞか」

立ち上がって、再び歩き出した。

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