9話 犬と飼い主と

気持ちのいい朝。


こんな朝は、いつぶりかな?

もう昔すぎて、覚えてない。


「はい、ご飯だよ」

のぞか。不思議な人間。

俺の知らない人種。


なんで、ここまで良くしてくれるんだろう。

今まで、こんな経験が無かったから、

少し戸惑う。


俺の耳と同じように

ハンデを持つのぞか。


とにかく。


色々お世話になったからな。

その恩は返すよ。


「そうだ、私、考えたんだよ?」

のぞかは言う。


「あなたの、おなまえ」


大事な、名前付け。


俺にとっては何回目の名前だろう?

過去の名前は思い出したくないし、

必要もないからいいけど。


ここって大事なとこだ。

飼い主のセンスですべてが決まる。


特に俺の場合、耳が悪いから。

聴きやすいといいな。


でも、どんな名前でも、

のぞかが付けてくれるだけで、

俺は嬉しかった。

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