第8話 カールス村のゴブリン退治
ゼップガルドの街を出発して2日後、その朝頃。カデュウ達は目的のカールス村に到着した。
斜面に段々畑を作ってある。この辺りはブドウ農家のようだ。
村は平和でのどかな空気を保っている。
無事、間に合ったようでカデュウはほっと息をついた。
かなりの高齢らしき外見で、若干背丈は小さいが足腰はしっかりしていそうなお婆さんが、ブドウの収穫を行っている。
この人が依頼人であろうか。
「冒険者ギルドから紹介されて来ました、カデュウと申します。ゴブリン退治のご依頼を出された方ですか?」
「きたかえや。めんこい子らじゃのう。ゴブリンどもらは、どっかその辺からきとる。多分洞窟じゃな。したら頼んだで」
どっかその辺などと言われても困るのだが。
知らないのかもしれないが念の為にもう一度カデュウは聞いてみた。
「あの。その洞窟というのはどこにあるんでしょうか?」
「ここからまーっすぐに行ったら山がある、そこらへんじゃ」
先程より大分具体的になった。
お婆さんの身振り手振りから判断して、この畑を西側に進んだ方向らしい。
「ま、ええわ。儂が案内しちゃる。ついてきい」
これは助かる。が、お婆さん大丈夫なのだろうか。とカデュウが心配していたが、お婆さんはすたすたと早い動きで先に進んでいた。
慌ててカデュウらもついていく。
「お婆さん早いですね」
「儂は山菜採るのが仕事じゃからね、いつもこの辺は歩いとる。さっきの畑はただの手伝いじゃ」
日ごろから野山を巡っている元気なお婆さんであった。
そして早い。カデュウ達も少々急がなければついていけない程である。
「儂はエウロっちゅうババアじゃ。うちの爺さんはパラドっちゅうジジイじゃ」
「エウロお婆さんですか」
「ほれ、ついたわいな。あそこじゃ」
1時間ほど歩いた頃であろうか。山の麓に洞窟があった。
見えただけなのでもう少々歩く必要はあるが、これで具体的に場所がわかったわけだ。
「じゃ、頼んだで。終わったらメシさ食ってけ。きつかったら儂んとこまた来い。怪我せんように遊ぶんじゃぞ」
遊びに行くわけではないが、その心遣いはありがたい。
「案内ありがとうございます、エウロお婆さん。それでは行ってきます」
洞窟の中は暗くて良く見えない。入口には苔が生えていたり、草が生えていたり、自然さを感じる。
入ってみなければわからないが、自然に見えるのは古いだけで、何らかの坑道跡という可能性もある。
ともあれ進む前に準備が必要であった。
「――【
まずは明かりをつける為のカデュウの魔術。光源の対象は左手のショートソードだ。
かつて古代の貧乏な魔術師が、ロウソク代は節約したいけど夜にも本を読みたくて開発したという魔術。などと先生が言っていた事を思い出す。
生まれた経緯がなんとも言えないものだが、やたら節約志向で作られた為か魔力消費も少ない上に効果時間は長く、色々と便利であった。
ただし光源とする物の指定が必要で、宙に光を浮かしたりは出来ない。
「たいまつとか要らなくて良いですね、ソレ」
「うん。手に何か持たなくていいからね」
たいまつのように手に持つ明かりは、片手がそれによって埋まるので不便なのだ。
魔術を使えないアイスからすればうらやましいものであったろう。
洞窟内部を見たところ過去に掘られた坑道であった、ならばある程度は人が通れるようになっているはずだ。
隊列は明かり役のカデュウが前衛、アイスはバックアタックの警戒と後詰めで後衛、イスマとソトとシュバイニーが中に入る形になった。
パネ・ラミデ付近の森でとった隊列と、同じ仕組みである。
敵が前からしかこないのであればまた違うのだが、奇襲を好むゴブリン相手には後ろの警戒も必要なのだ。
それに状況次第で前衛に上がるのは、大した手間のかかる事ではない。
「……前、5匹」
何らかの魔術を使っているのだろうか、イスマによってさっそく敵が近づいている事を知らされた。
視界には見えないが、その言葉を疑う理由もない。
「まずは、僕がつっこむよ」
カデュウはまっすぐに走り、ゴブリンの姿を視界に収めた。その音と明かりでゴブリンもその存在に気付く。
「GOBU!?」
背を向けて何か話していた最中なのかもしれない、反応が鈍かった。そのまま左手のショートソードで中央の1匹の頭部を突き刺す。
続けて身体を回転させて右のロングソードで右側にいたゴブリンの首を薙ぎ斬った。
そこでゴブリン達の反撃が飛んでくる。手に持った薄汚い剣をカデュウに向かって振るう、がその軌道にカデュウの左手のショートソードが割込み防がれる。
そのまま右手のロングソードで薙ぎ払い、ゴブリン3匹目。左手のショートソードを引き、突き刺す、ゴブリン4匹目。
流れるように殺されていく仲間をみて最後の1匹が逃げようとするが、跳躍したカデュウによって追い付かれ首をはねられた。
そして倒れているゴブリンにもう一度、とどめの追い打ちを加えていく。先生の教えの通り、油断なく。
「ほほう。いいね、新人の癖に戦場の泥臭さを感じるぞ」
その一連の流れを、満足気な表情でソトが褒め称えた。
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