十二戦記
@yatamikami
第1話 新たな時代
始めに知覚のは、眩しさだった。
浮遊感に穏やかに包まれ、あたりから静かな寝息が聞こえる。
周りを見渡してもぼやけた世界……いや、ぼやけた視界だろうか。ピントが合わず歪な世界だ。
客観的な時間にして3年ほどの時が過ぎ去った頃、ようやく自我を取り戻し始めたそれが覚えるのは混乱だ。
なんなのだ、と。まだ意識を長く保つことが厳しい器に入れられたのだとその時は考えもしなかった。だからこそ近くで誰かが泣き叫んだ時みっともないという感情を抱きつつも理解はしていなかった。
次に感じたのも混乱だった。記憶にあるのは敵と戦っていたこと。だが、今現在、白衣に身を包んだ女に口元を拭われている。これが知人ならなんとか助かり介護されていると納得できるだろう。視野のぼやけた世界も怪我の影響と考えられる。けれどもはっきりと見えるようになった今、自分の目が捉えたのはやはり、白衣に身を包んだ女であった。そして周りを見渡すと……見知らぬ物ばかりだ。光は白く輝き、周りにも白衣の女が大勢おり、上からは暖かい空気が吹き付けられている。
「
同時に気付くのは周りがあまりにもピカピカしていることだ。
俺が知らないだけでもう栄えた地域では存在していたのだろうか。
しかし……、なぜ自分がこんなところに?
「雅くん?雅くん?」
理解し難い状況。なぜ自分がそんな所に?
「もう、しっかり口を開けもしょうね、雅くん?」
それこそが問題である。自分の近くに差し出さされている匙がまさか自分に向けられたものとは夢にも思わないだろう。雅とやらが食べればいいのだから。
だがしびれを切らしたのか、匙をあろうことか自分の口に突っ込んできたのだ。この現実を、理解してない「伊賀雅」に突きつける。
今まで食べたこのない味。これがされに自分を混濁させる。つまり自分
が「伊賀雅」ということに。だからこそ叫ぶ。なぜだ、と。
慶長5年、関ヶ原の戦い。徳川家康を中心とする東軍と石田三成を中心とする西軍の今世紀最大といっても過言ではない大変な戦だった。両軍大きな被害を出しながらお互いを攻め入り西軍はどんどん劣勢を強いられていった。
この時代に平等の二文字は存在しなかった。強い者が生き残り、弱い者が死ぬ。そんな世界だった。だから皆「強い人であるべし」という環境下にあった。だから、「弱い子」は強くあるため鍛錬を積み「強い子」であるようにし、「強い子」は、「強い子」のままで居られるように努力した。大人になっても同様である。
俺はこの時代では伊賀尊治を名乗っており西軍についた。情報保運ぶのが専門だったが、古賀の奴らとあった。幼馴染のやつだった。今は大戦時だから情けは必要ない。俺は命を絶った。
俺は神を信じない。ならば彼の存在をなんと説明すればいい
「おぬしら、本当に人間なのか?」
「失礼、どちら様だろうか?」
老翁が、呆れた目でこちらを観察してくる。
「……狂った連中だ、生涯深く反省することになる」
仮に神だとしたら生涯の意味とはなんだろうか……。
この世に神などいるならば、なぜあの様な世界を作ったのか疑問である。故に神などいないのである。
「お前らは創造神を殺す気か……」
こいつ自分を神だと言っている。頭大丈夫だろうか。先ほど神はいないと考えたばかりなのに。神がいるとすれば、始まりの人間に何かしらのプログラムは組み込んでいるはずだ。目の前の奴が本当に神だというのならば、そのミスによって大勢のやつが死んでいくことになる。死ねるのであれば是非死んでもらいたいものだ。
「つまり、お前は緊迫した世界の中で生きてきたからというのだな。ならが今のお前の能力で余裕な世界ならばいいのだな。」
今まで忍びとして生きていた時の感覚がまずいと叫ぶ。
「いや、お待ちください」
「うっさい」
神なのだとしたらもっと丁寧な言葉を選んで欲しいものである。相当ブチギレているのだろう。そうこうしていたら、どういう訳か周りに陰陽師どもが使う円陣が浮かび上がり、俺はその神とやらの目の前から消えた。そして、あの眩しさを感じたのであった。
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