第3話



「この後、理央と会うの?」



壱夜にしてはやけに低い声だった。



「会うの?」



なにも答えない私に痺れを切らしたかのように、もう一回聞いてくる。


いつも優しい壱夜がちょっとだけ怖く感じた。



「…うん、参考書持って来てくれるみたい」


「ふーん」



自分から聞いたくせに、私が答えると気のないような返事をして。


でも真顔で私の顔を見つめる壱夜。



「なに?」



沈黙に耐えきれずそう聞くと、ギュッと握りしめられていた腕をふわっと持ち上げられて、その勢いで後ろに倒れた。


私の頭が乗ったせいで、後ろの置いてあったふかふかのクッションがぼふっと音を立てる。


天地がひっくり返って一瞬何が起こったか分からなかった。


映っていた天井の景色に壱夜の顔が飛び込んできて、私の顔の横にそっと手をついた。




「ねー」


「な、なに?」


「理央と今でも2人で会ったりしてるの?」



壱夜は真っすぐ私を見つめる。


え…なんか壱夜、怒ってる?



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