掃き溜めの塵
@yukkurisensei
白雪姫
「見て、白雪姫が目を覚ました」
小人の一人が叫ぶ。ここは皆さんご存知の白雪姫の世界。ちょうど白雪姫が王子のキスで目を覚ましたシーンであります。
「私は…眠っていたの?あら、ここはどこかしら」
今まで意識を失っていた白雪姫は頭が回らずぼうっとしています。そこへ一人の小人が駆け寄りました。
「あのね、白雪姫。実はかくかくしかじか」
「あら、そういう事だったのね。それで、その王子様というのは…」
それを聞いて王子がマントを翻しかっこよくお辞儀しました。
「私です、白雪姫」
それを見た白雪姫は王子に心奪われました。
「まぁ、なんて素敵な人。決めたわ。私、この人と結婚します」
「この上ない光栄です。それでは、早速お城へ」
さて、ここまで聞いて怒ったのは小人たちです。小人の一人が顔を真っ赤にして言いました。
「ちょっと待ってよ」
「あら、どうしたの」
「どうしたもこうしたもないよ、君が森をさまよって僕達の家に来てから今まで生活できたのは僕達のおかげじゃないか。それを忘れてその男について行くって言うのかい」
少し考えてから、白雪姫はぽんと手を打ちました。
「本当ね。あなた達になんのお礼もしないなんて恩知らずだわ。ねぇ、王子様。この小人たちをお城に招待しましょう。あんなボロっちい小屋で一生過ごすなんて、可哀想だわ」
それを聞いて王子はにっこり
「さすが白雪姫、お優しい。おやすい御用です。小人たちも城で暮らそうじゃありませんか」
慌てて小人たちは手を振ります。
「いやいやいや、そんなの生殺しじゃないか。白雪姫も僕達の気持ちには気づいていただろ」
白雪姫はキョトンとして聞き返します。
「あら、もしかして私の事好きだったの?てっきり親心のような無償の愛だと思っていたわ」
「そんな訳あるか」
ほかの小人達も口々に話しはじめました。
「僕達だって男なんだよ。赤の他人の女の子を家に泊めるのが無償の愛なわけないだろう」
「そうだそうだ」
「森をさまよっていた君を養ったのも、いつか僕達のうちの誰かと結婚してくれると思っていたからなのに」
それを聞いて白雪姫はつまらなさそうに答えます。
「なんだ、結局あなた達もケダモノだったのね。もういいわ、王子様。こんな人たちほっておいてさっさとお城に行きましょう」
慌てたのは小人たち。
「待ってよ白雪姫」
「その男は通りすがりのかわいい死人にキスしていくような変態だよ。そっちのがよっぽどケダモノじゃないか」
白雪姫はもう小人たちにこれっぽちも興味が無いのでしょうか、つんとしたまま答えます。
「あら、だったら私の周りにはケダモノしかいないのね。いいわ。それだったら背も低くてカッコよくもない貧乏なケダモノより、お金持ちでイケメンで高身長で権力までもってるケダモノの方について行くわ」
「そんなことがあるか」
「ごめんなさいね、あなた達と結婚だなんて本当に嫌なの。稼ぎも良くないし掃除も雑。何回言ってもあなたたちの下着と私の服を分けて洗ってくれないし、料理は見た目も味も下の上。一体どこに魅力を感じろっていうの」
可哀想に、とうとう小人たちはおいおいと泣き出してしまいました。しかし白雪姫はそんな小人たちに目もくれず、王子とふたりでそそくさと馬車に乗り込み出発してしまいます。
一部始終を見ていた王子の家来二人は馬車を運転しながら話し始めました。
「おい、この白雪姫とかいう女。見た目は可愛いがとんだ性悪女じゃねぇか」
「まぁあの王子とはお似合いなんじゃないか。なんせ、魔女と結託して『自分のキスで呪いが解けるリンゴ』を作るような人間だ」
「白雪姫も城に着けばさぞ驚くぞ。なんせ自分と同じような経緯で側室になった女が何十人もいるんだからな」
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