第336話 幻影
レイナの背中を暫く擦っているとレイナが落ち着いたのだが、先程の自害騒ぎの後はツンデレさんが乙女に変貌して、俺に尽くす勢いに変わっていた。
それはともあれ、レイナに幻影について確認すると、やはり俺が触れた瞬間に幻影が見えたという。意味が分からなかったとは言っていたが、二つの幻影を見たと言う。
一つは向こうの世界での話っぽかった。多くの女性達に歓迎され、どうやら俺の妻として迎えられたらしい。そして向こうの世界に行った段階で俺の妻だったと戸惑いながら伝えて来た。また、姿格好から少なくともシェリーとナンシーがいたのはほぼ間違いない。名前も言っていたからだ。
もう一つ見た幻影はこちらの世界から向こうの世界に転移する時の様子だった。既に数人ならば向こうの世界に戻れる事は分かっている。ただし方法と時期、人数がはっきりとは分からなかった。残念ながら今回も一番知りたかった時期が分からなかったのだ。しかし、レイナの言うには最低8人が向こうに行くのだと言う。
時期が分からなかったのはそこに居た者達の年齢が彼女には判断が付かなかったからだ。トリシア達はフードを被っていて個人を特定するにとどまった。もし20歳に見えたら少なくとも3年は帰れない。
俺はバブっていた影響で分かっていないが、3人目の女性を特定するには至らなかった。ただ魔法陣のようなものがあり、そこで8人が手を繋ぎ、輪になっていた。そして周りを光に包まれた後、見知らぬところにいたと言っていた。
レイナが手を掴んでいたのはヒナタで、少なくとも俺とブラックスワン4人の姿は見えていた。隣にいた者が誰だったかが幻影では見えなかったと言う。
気を取り直しもう一度女性達の前に出る事を決断した。ヒナタにもう一度集めて貰うようにお願いし、短時間で再びホールに女性達を集めて貰った。
レイナが案内人みたいな形で先導してホールに入っていくと言っていた。
準備が整ったので再び俺はホールの入り口に立っていた。ホールのドアが開けられ、レイナが
「さあ、ランスロット様参りましょう」
と言うのでひょいっとお姫様抱っこしてやった。
短くキャッと悲鳴をあげたが、お構いなしだ。そして天使の体に変化させ、翼がある状態でホールの中を飛んでいく事にした。また、背中をライトで照らし、神々しく見える演出をするのも忘れない。
そこまでしなくても本来良かったのだが、先程晒してしまった醜態をリカバリーするには、これ位はしなければならないと思ったからだ。
レイナをお姫様抱っこし飛んでいるものだから、騒然となった。お姉さまが抱かれて飛んでますわだとか、て、天使よ!飛んでるわとか、イケメン!など色々な声が聞こえてきた。
中には平伏する者もいた。そう、やり過ぎたのだ。壇上にいるヒナタのところに行き、俺は着地した。ヒナタも呆れ顔で見ていた。そしてヒナタが話し始めた。
「皆様、一旦仕切り直しです。この方が我が主ランスロット様です。先程は我が主は掛けられている呪いにより大変な状態でしたが、今は落ち着いておられて大丈夫です。この方は本来ありえない位な理性を持った御方です。皆にお願いがあります。おそらく彼は私とレイラ、それと少なくとももう一人を娶る筈です。
彼が触れば分かります。なので退出する時に一人ずつランスロット様と握手をして行ってください。皆のこれからについてはまたお話をしますが、殆どの者を街に返します。私がこの世界を去り、我が主に付いていくからです。いつでもここを出られるよう大事な物を纏めなさい」
レイナは恥ずかしそうに俺の体に隠れるようにして、腕を掴みぴたっと寄り添っていた。その様子を見ていた者達は、意外そうな顔で見ているのであった。男は害虫だと常々言っていたからである。
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